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2023/6/7

総合 - ドイツ経済ニュース

メーカーの4割が国外移転を開始・検討

この記事の要約

ドイツ経済を底支えする中小・中堅メーカーの間に製造拠点を国外に移転する動きが強まってきた。背景にはエネルギー価格の高騰など一過性の問題のほか、構造要因も横たわっており、経済界の危機感は大きい。独産業連盟(BDI)のジーク […]

ドイツ経済を底支えする中小・中堅メーカーの間に製造拠点を国外に移転する動きが強まってきた。背景にはエネルギー価格の高騰など一過性の問題のほか、構造要因も横たわっており、経済界の危機感は大きい。独産業連盟(BDI)のジークフリート・ルスヴルム会長は「産業立地の枠組み条件を改善することは政治の課題だ」と述べ、政府に早急な対策を促した。

BDIは加盟企業を対象に4月下旬から5月中旬にかけてアンケート調査を実施し、392社から回答を得た。そのうちの41%は従業員数100人未満、24%は100~249人の企業が占めており、1,500人以上は10%にとどまった。

新たな拠点をどこに設置しますかとの質問(複数回答可)で最も回答が多かったのは「わが社が投資を計画するのはドイツだけだ」で、44%に上った。経営規模の小さい企業が多いことを踏まえれば、同回答が多いのは自然と言える。

問題は、「生産・事業・雇用の一部を国外に移転し始めている」が16%に上ったことだ。「生産・事業・雇用の一部を国外に移転することを具体的に検討している」も30%に上っており、国外移転派は国内残留派と拮抗している。「ドイツないし欧州連合(EU)内に生産・事業・雇用の一部を戻すこと(リショアリング)を具体的に検討している」は3%にとどまった。

計画する移転先地域・国(最大2つまで回答可)ではEUが29%で最も多く、これに北米が20%、欧州のEU非加盟国が10%で続いた。移転の理由についての質問は行われていないが、米国のインフレ抑制法(IRA)は北米移転を後押ししている可能性がある。脱炭素化につながる投資であれば、カナダ、メキシコでもIRAのメリットを享受できる。

中国への移管は8%にとどまった。インドとその他のアジアもそれぞれ5%と少ない。

現在直面する経営上の問題については「人材不足を含む人件費の上昇」が76%で最も多かった。2022年9月の前回調査(58%)からわずか数カ月で18ポイントも増えている。ルスヴルム氏は「企業の約4分の3は深刻な人材不足を主因とする割高な人件費を嘆いている」と指摘。国外から必要な人材を確保しようとしても行政上の手続きが複雑で長期化することが大きな足かせになっていると述べ、国外の専門人材を簡単かつ迅速に採用できる体制の構築を政府に訴えた。これまでの移民規制緩和では不十分だとしている。

経営上の問題として2番目に回答が多かったのは「エネルギー・原料コスト」で62%に上った。ロシアのウクライナ進攻に伴うエネルギー価格の高騰が深刻だった前回の81%から大きく低下したものの、警戒を緩める状況には程遠い。同氏は、製造業向けの電力価格が競争力を保てる水準に速やかかつ持続的に引き下げられなければ、GX(グリーントランスフォーメーション)などの改革は達成できないと危機感を表明した。GX投資を棚上げにする企業は前回調査を3ポイント上回る45%に拡大している。

減産・操業停止は15%に

一方、「サプライチェーンのひっ迫」が問題だとする企業は前回の41%から11%に低下した。22年2月の前々回調査(60%)からは約6分の1に縮小している。大半の企業にとってほぼ解決済みの問題となっているもようだ。

同じことはコロナ禍にも当てはまる。「コロナ禍の影響」が問題だとする企業は前回の8%から2%へと減少した。

「地政学的な緊迫/貿易の先行き不透明感」も前回の22%から15%へと減少した。ロシア・中国に絡んで新たなリスク要因が出ていないことが背景にあるとみられる。ただ、ウクライナの反転攻勢が本格化すると、地政学的な緊迫は強まる恐れがあり、今後の情勢次第では再び増加する可能性がある。

「国内工場の稼働を現在、引き下げているないし停止している」企業は15%となり、昨年9月の9%から大幅に増えた。エネルギー・原料価格高騰のほか、金利上昇などで需要が世界的に低迷していることが反映されているもようだ。ウクライナ戦争勃発直前の昨年2月(7%)に比べると2倍以上に拡大した。

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