極右政党禁止申請を憲法裁が棄却

極右のドイツ国家民主党(NPD)は基本法(憲法)21条2項で禁じられた反民主的な結社に当たるとして州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)が同党の禁止を申請していた裁判で、連邦憲法裁判所(BVerfG)は17日、訴えを棄却する判決を下した。判決理由で裁判官は、NPDの思想は人種差別的でナチズムの思想と親近性が高く憲法に敵対的だと認定しながらも、同党には憲法に定められた「自由で民主的な基本秩序」を脅かすだけの力がないなどと指摘。反民主的な思想を掲げているというだけでは政党禁止に必要な要件を満たさないとの判断を示した。

NPDは1933年から45年にかけてドイツを支配し第2次世界大戦を引き起こしたヒトラーの国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)と思想・用語面で親近性が高い。外国人排斥を唱えており、党員による暴行事件なども旧東ドイツ地区を中心に発生している。

このため政府と連邦議会(下院)は2001年、同党の禁止を憲法裁に申請した。このときは捜査当局が同申請の根拠となる情報を、党幹部を含むNPD内の秘密情報提供者(協力者)から得ていたことが発覚したことから、憲法裁は情報入手方法に問題があるとして03年に審理を中止した。

連邦参議院はこの事情を踏まえたうえで今回の裁判を起こしたが、敗訴した。裁判官は申請棄却の理由として、NPDは(1)自由で民主的な基本秩序を脅かすだけの潜在力を持っていない(2)反憲法的な目的の実現に向けて計画的に活動してはいない――を挙げた。

(1)の根拠としては党員数が減少傾向にあり現在は6,000人にとどまることや、連邦議会と州議会に議席を持っていないことを挙げた。

(2)についても、同党の党員が思想信条の異なる人物を脅迫したり暴行を加えることはあるものの、政党禁止の要件を満たすほどの数には達していないと指摘。そうした違法行為は憲法の政党禁止条項でなく刑法で対処すべきたとの見解を示した。

憲法裁は今回の判決で、NPDを現在は禁止できないものの、将来仮に民主的な秩序を脅かしたり、党員の脅迫・暴行活動が大幅に増えた場合は、禁止できるとの判断を示したことになる。

■ 基本法21条2項

党の目的と支持者の行動が自由で民主的な基本秩序の弱体化ないし除去、あるいはドイツ連邦共和国の存続を危うくすることを目指す政党は違憲である。違憲の問題については連邦憲法裁判所が決定を下す。

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