自動車大手の仏PSAプジョー・シトロエンが独オペルと英ボクソールからなる米同業ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州事業(GME)を買収する可能性があることが14日、明らかになった。ブルームバーグ通信などが報じ、両社が追認したもので、協力関係の拡大やPSAによるGME買収の可能性を話し合っている。最終的に合意するかは定かでないものの、PSAは交渉が進展した段階にあることを明らかにした。
PSAとGMは2012年に包括提携で合意した。PSAとGMEの業績を立て直すことが狙いで、製品開発、調達、物流分野で協働するほか、GMがPSAに7%出資することを取り決めた。だが、経営危機に陥ったPSAがその後、中国メーカー東風汽車から出資を受ける方向で交渉を開始したことから、東風汽車への技術流出などを嫌ったGMがPSAとの協力関係を縮小。GMはPSA株を売却し、包括提携を解消した。
そうした経緯があるにもかかわらずPSAがGMEの買収も含めてGMとの交渉に乗り出した背景には、仏競合ルノーに販売台数で追い抜かれるなど厳しい状況に置かれていることがある。
ルノーは日産とアライアンスを結び業績を着実に拡大している。一方、東風汽車との提携はPSAにとって事業資金の獲得や中国市場の開拓で大きなプラス材料となっているものの、電気自動車や自動運転車、モビリティサービスなど今後の競争力を大きく左右する事業分野を開拓するためには欧米や日本などのメーカーと手を組む必要がある。
GMにとっては赤字が続くGMEは経営の重荷であり、何らかの措置を講じる必要性が高まっている。
PSAが仮にGMEを買収すると欧州市場シェアは16.3%に拡大し、同市場トップのVW(24.1%)との差を大幅に狭めることができる。規模の効果もある程度、引き出せる見通しだ。ただ、ともに大衆車を手がけるPSAとGMEではモデルや販売網で補完性が少ない。また、販売地域が欧州に限られるGMEを買収してもPSAが目指す事業のグローバル化に寄与しない。このため専門家の間からは「病人二人が一緒になっても、そこから一人の健康な人間は生まれない」との厳しい見方が出ている。