原子力発電所の運営事業者から国(連邦)が徴収した核燃料税は違憲として電力大手3社が提訴していた係争で、連邦憲法裁判所(BVerfG)は7日、原告勝訴判決を下した。3社は2011年から16年にかけて同税を総額62億8,500万ユーロ納付しており、連邦財務省は同日、金利を上乗せして還付する方針を明らかにした。税還付で財政赤字に転落することはなく、補正予算を組む考えはないと強調している。
ドイツ政府は2010年、原発の稼働期間を平均12年間、延長することを電力会社に認める見返りとして、核燃料税を導入した。核燃料1グラムにつき145ユーロを課すというもので、11年1月から16年末まで徴収することになっていた。税収は国の財政赤字削減と放射性物質よる地下水汚染が起きているアッセ中間貯蔵施設の改修に充てられた。
政府は福島原発事故が起きた11年、原発の稼働期間延長を撤回した。その際、核燃料税を廃止しなかったことから、原発事業者のエーオン、RWE、EnBWは同税が基本法(ドイツの憲法)と欧州連合(EU)法に違反するとして裁判を起こした。ドイツで原発を運営してきたスウェーデンのバッテンフォールは11年3月の福島原発事故を受けて独での原発稼働を停止したことから、核燃料税に絡んだ訴訟を起こしていない。
原発3社はEU法に関する係争で15年に敗訴したものの、独違憲訴訟については勝訴するとの見方を示してきた。BVerfGの裁判官は今回の判決で、核燃料税は基本法106条で国に認められた徴税権の範囲を逸脱したもので無効だとの判断を示した。
原告3社は原発廃止の前倒しと再生可能エネルギーの拡充加速を柱とする国の「エネルギー転換政策」の影響で財務が悪化している。税還付を受ければ累積債務を一定程度、削減できることから、3社の株価はこの日、急伸した。
福島原発事故を受けてドイツが原子力発電の全廃時期を前倒ししたことを所有権侵害としてエーオン、RWE、EnBWの3社が提訴した係争ではBVerfGがすでに16年の判決で訴えを棄却した。このため、今回の判決により原発廃止に絡んだ3社と国の主要な係争は片が付いたことになる。
ただ、外国企業であるバッテンフォールは、原発廃止を前倒しした独政府の行為は投資保護に関する国際協定に違反するとしてワシントンの国際投資紛争解決センター(仲裁裁判所)に提訴している。損賠請求額は47億ユーロ。バッテンフォールが同仲裁裁で勝訴すると、国はさらなる痛手を受けることになる。