メルケル首相が譲歩、難民受け入れ枠設定で中道右派2党が合意

中道右派の姉妹政党であるキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)は8日、自由民主党(FDP)および緑の党との間で今後行う政権樹立交渉に向けた政策調整会合を開き、難民受け入れ枠の設定で合意した。CDUの党首であるメルケル首相が一貫して否定してきた「上限(Obergrenze)」という言葉は合意文書のなかに記されていないものの、純受け入れ数を最大20万人とすることが明記されており、同首相は実質的に上限設定を受け入れた格好だ。

ドイツに流入する難民の数は2015年に89万人へと急増した。これを受けて排外政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率が急上昇。大量の難民を受け入れ続けるのは不可能という事情もあることから、CSUは年間受け入れ数に20万人の上限枠を設定することを政府に要求した。

メルケル首相はこれを拒否し、トルコとの難民協定など上限設定以外の方法で難民数を減らす姿勢を取り続けてきたものの、9月下旬の連邦議会(下院)選挙でCDUとCSUがともに得票率を大幅に落としたことから、CSUが上限要求をこれまで以上に強く要求。今回の会合で妥協が成立した。

合意文書では難民の流入数から出国数を除いた実質ベースの流入数を最大20万人とすることが取り決められた。これにより受け入れ数の上限が設定されたことから、CSUの要求はおおむね受け入れられた格好だ。

世論調査会社ユーガブがdpa通信の委託で実施したアンケート調査によると、難民受け入れへの上限設定に賛成のドイツ人は56%に上り、反対の28%を大幅に上回った。ただ、緑の党の支持者では反対が60%で、賛成は26%にとどまっている。

政権樹立の予備交渉は11日に始まる予定。緑の党とFDPは今回の合意内容を批判していることから、政権協議で大きな争点となるのは確実だ。

CSUはバイエルン州の地方政党。同州以外の地域で活動するCDUとは連邦議会で統一会派を組んでいる。

上部へスクロール