英国が欧州連合(EU)と新たな通商協定を締結せずにEUから離脱するハードブレグジットが現実になると、同国とEUに年600億ユーロの巨額経済損出が発生する見通しだ。独Ifo経済研究所が独自調査をもとに3日、明らかにしたもので、クレメンス・フュスト所長は「ブレグジットには敗者しかいない」と指摘。EUと英国は包括的な自由貿易協定を締結し、ブレグジットに伴う損出を最小限に抑えるべきだと提言した。
英国がEUと新通商協定を結ばずに離脱すると、EUとの通商には世界貿易機関(WTO)のルールが適用され、現在は存在しない関税などの障壁が発生することになる。このため、英国はEU予算への拠出金負担がなくなるにもかかわらず、差し引きで年160億ユーロの損出を被ることになる。同国以外のEU27カ国は英国の拠出金消滅と関税などの通商コスト膨張のマイナス効果で合わせて年440億ユーロの痛手を受ける見通しだ。
一方、自由貿易協定が締結された場合は、EU27カ国の損出が270億ユーロに低下。英国は新たな通商コストの額が拠出金負担とほぼ同水準となるため、ブレグジットの損出は相殺されるという。