「軽油の税優遇廃止を」、VW社長が提言

自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループのマティアス・ミュラー社長は経済紙『ハンデルスブラット』のインタビューで、ディーゼル車の燃料である軽油の税優遇を段階的に廃止すべきだとの見解を表明した。独自動車業界全体の立場に最大手メーカーが“造反”した格好で、注目を集めている。軽油の税軽減がなくなればディーゼル車の需要減に一段と拍車がかかる見通しだ。

ドイツではガソリンの石油税が1リットル当たり65.45セントに上るのに対し、軽油は47.04セントと低く設定されている。ディーゼル車はガソリン車に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないことから、温暖化防止の観点から軽油が優遇されている。

これを受けてディーゼル車の需要は長年、拡大傾向にあったものの、VWの排ガス不正問題発覚を受けて風向きが変化した。ディーゼル車は窒素酸化物(NOx)の排出量が多く、都市部での走行制限が現実味を帯びているためだ。新車登録に占めるディーゼル車の割合は2015年11月の49.7%から16年11月は44.9%、今年11月は34.0%へと落ち込んだ。軽油の税優遇が廃止されれば、ディーゼル車購入の大きなメリットが消えることになる。

ミュラー社長はインタビューで、エンジン車から環境に優しい電気駆動車へと移行するのであれば、軽油の税優遇を続けることはできないと発言。同税優遇を段階的に廃止し、それで浮いた財源を電気駆動車の分野に振り向けるべきたとの見解を示した。

VWは排ガス問題を受けて電気駆動車へのシフトを急速に推し進めており、同社長は軽油の税優遇がなくなっても「会社存続の危機に陥る心配はない」と自信を示した。競合ダイムラーやBMWも同様の方向に舵を切っているものの、ディーゼル車については「環境目標の達成に必要な技術だ」(ダイムラーのツェッチェ社長)との立場を堅持。独自動車工業会(VDA)もディーゼル車優遇の廃止に反対の姿勢を明確に打ち出している。

VWが業界に一線を画す背景には、軽油税優遇の廃止で得られる資金を充電インフラの拡充に充てれば、低迷している電気自動車(EV)の普及に弾みがつくとの計算があるもようだ。現在は充電インフラが足りずEVでの遠出が難しいことから、EV購入を見合わせる消費者が多い。

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