サルを用いた排ガスの健康影響調査、独自動車業界が委託

ディーゼル車の排ガスが健康に及ぼす影響をサルを用いて調べる実験を、独自動車業界のロビー団体が米国の研究機関に委託していたことが、『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道で明らかになった。ドイツ政府のシュテファン・ザイフェルト報道官は29日、「こうした実験は倫理的に正当化できない」として、関係各社に早急な調査を要求した。

同実験はロビー団体「輸送部門における環境・健康のための欧州研究協会(EUGT)」が米ニューメキシコ州アルバカーキにあるラブレース呼吸器官研究所(LRRI)に委託したもの。2014年に行われた同実験はサル10匹を閉じ込めた部屋にディーゼル車の排ガスを4時間、送り続けるというもので、VW車「ビートル」が利用された。排ガス浄化技術が進展した結果、ディーゼル排ガスの健康への影響が大幅に軽減されたことを証明することが狙いだったという。

EUGTは交通が健康にもたらす影響の調査を目的に、2007年に設立された。会員は自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMW、サプライヤー大手ボッシュの計4社。ボッシュは13年に脱会し、EUGT自体も17年に解散されている。

VWは同実験について「当時選択された実験方法は誤りだった」として謝罪するとともに、「動物実験はわが社の基準にまったく合致しない」との立場を表明。ダイムラーも「この動物実験は不要で嫌悪すべきものだ」として実験に至った経緯の調査を確約した。BMWは同実験に関与していないためコメントできないとしている。

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