独複合企業ティッセンクルップと印同業タタ製鉄が欧州鉄鋼事業を合弁化する計画が大きく前進した。同計画の発表を受けてティッセンクルップと金属労組IGメタルが昨年末に締結した新労使協定を組合員が92.2%の賛成で承認したためだ。今後発表される同合弁の経済性に関する鑑定書で肯定的な評価が下され、今春の監査役会で合弁化への承認が得られれば、新会社ティッセンクルップ・タタ製鉄が設立される見通しだ。
両社は昨年9月、欧州鉄鋼事業の合弁化で合意した。欧州鉄鋼各社は過剰設備と低価格の中国製品流入を背景に業績不振が構造化していることから、新会社で組織のスリム化とコスト削減を実現。競争力を強化する意向だ。
ティッセンクルップ・タタ製鉄は平鋼生産高が年およそ2,100万トン(プロフォーマベース)、売上高が約150億ユーロ(同)、従業員数が約4万4,000人(同)で、欧州ではアルセロールミタルに次ぐ2位メーカーとなる。2019年の業務開始後は販売、管理、研究開発、調達、物流、サービスセンターの統合および川下工程の稼働率向上を通して年間コストを4億〜6億ユーロ圧縮する。2020年からはこれとは別に生産ネットワークの最適化を検討し、さらなるコスト削減を図る。
合併化に伴いティッセンクルップでは2,000人規模の人員削減が行われることから、従業員側は反発。IGメタルは経営陣と交渉を行い、ドイツ国内の鉄鋼拠点9カ所で◇2026年9月末まで経営上の理由による整理解雇を行わない◇年4億ユーロ以上の投資も行う――との譲歩を引き出した。
ティッセンクルップ・タタ製鉄の経済性に関する鑑定書はIGメタルの要求で中立の第三者が計2件、作成する。同労組はプレスリリースで、監査役会の被用者側代表が合併計画に賛成するかどうかは鑑定書の結果にかかっていると強調。鑑定書で合併に否定的な見解が示された場合は支持しない可能性を示唆した。
ティッセンクルップは景気の変動を大きく受ける鉄鋼事業から将来的に撤退し、経営資源をエレベーターや自動車部品など素材以外の分野に絞り込む方針を打ち出している。