高級車大手の独BMWが電動車用電池の主要原料であるコバルトとリチウムを安定的に確保できる見通しだ。調達担当のマルクス・デュースマン取締役が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に明らかにしたもので、今後10年間の調達契約の調印が間近に迫っている。電動車生産・販売のカギを握る電池原料を長期に渡って確保することに独メーカーで初めて成功することになる。
リチウムイオン電池は電動車のコストの約40%を占める主要部品。また、同電池コストの3分の1は原料が占めている。このため、電動車分野での競争を優位に進めるためには技術力のほか、電池を確実に確保できることも重要になる。
だが、コバルトの市場価格は電動車向け需要の拡大見通しを受けて急上昇しており、現在は2016年初頭の3倍の1キロ当たり78ドルへと高騰。電気自動車(EV)の有力企業テスラではコバルト不足が事業のリスク要因として浮上している。独フォルクスワーゲン(VW)は安定確保を目指しているものの、これまでのところ実現していない。
BMWが調達するコバルトの規模や価格は不明だが、デュースマン取締役は10年間で10万トン以上の供給を受けることで合意する見通しを明らかにした。同社自体は電池を量産せず、調達するコバルトとリチウムは取引先のリチウムイオン電池メーカーに供給する。
コバルトはコンゴ民主共和国が主要産地で、同国は世界の埋蔵量の3分の2を占める。採掘で環境破壊や健康被害、児童労働などの問題が出ていることから、BMWは採掘から電池セル製造に至る供給網を明確に把握し、公表する予定だ。