中国の国有送電会社、国家電網がドイツ3位の送電事業者50ヘルツに資本参加する見通しだ。電力は安全保障上の重要なインフラであることから外資による出資は懸念材料となる可能性があるものの、国家電網は外資規制を回避する形で50ヘルツに出資する予定のため、政府が禁止することはできない。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙などが報じた。
50ヘルツは独東部とハンブルクで送電事業を展開する企業。もともとはスウェーデンの電力大手バッテンフォールの子会社だったが、欧州連合(EU)の送発電分離政策を受けてベルギーの送電事業者エリアと豪IMFグローバル・インフラストラクチャー・ファンドが2010年に共同買収した。出資比率はエリアが60%、IMFが40%。メディア報道によると、国家電網はIMFから50ヘルツの資本20%を譲り受ける方向という。
50ヘルツのボリス・シューフト社長は、原発廃止を前倒しして再生可能エネルギー発電の拡大を加速するドイツの「エネルギー転換政策」で必要となった送電網投資の資金を過去8年間、エリアとIMFがねん出したことを指摘したうえで「新たな投資家1社を迎え入れてこの道をさらに先に進みたい」と述べた。
ドイツでは貿易法の規定により、公共秩序・セキュリティに支障が生じる恐れがあると経済省が判断した場合、EUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)域外の企業がドイツ企業に25%以上、出資することを禁止できる。国家電網は50ヘルツの資本取得を20%にとどめることから、経済省は同法に基づく審査をできない。緑の党のオリファー・キルシャー副院内総務は『ハンデルスブラット』紙に、EUの送発電分離政策を受けてドイツ政府が電力会社の送電事業を民間投資家向けに売却させたのは重大な誤りだったと指摘。国内に4社ある送電会社を統合して国有化することを提唱した。