「車載電池生産に参入せず」、経営リスクを踏まえボッシュが決定

自動車部品大手の独ボッシュは28日、電動車向け事業の経営資源を電動パワートレイン、モーター、パワーエレクトロニクス、電池システムおよびシステム分野に絞り込む方針を発表した。電池システム用のセルは外部から調達する考えで、これまで検討してきたセルの内製化には踏み切らない。これに伴いセル内製の準備として展開してきたGSユアサなどとの電池合弁リチウムエナジーアンドパワー(LEAP)を解消するとともに、同分野の子会社シーオ(SEEO)を売却する。

ボッシュはエレクトロモビリティ市場が2020年以降に大衆化すると予想。電動車向け部品で世界最大のサプライヤーとなることを目指している。これまでは電動車で最も高額な部品である電池セルも自社生産し、同部品の世界最大手になることを検討していた。具体的には2030年の世界需要が1,000ギガワット時(GWh)に達すると予測したうえで、その20%に当たる200GWhを生産する考えだった。

だが、これを実現するために必要な投資額は電池工場だけで200億ユーロに上ることから、失敗した時の痛手は極めて大きい。また、仮に事業化に成功したとしても、生産コストの4分の3を原料費が占めることから、日韓中企業との激しい競争のなかで利益を確保し続けることは容易でない。投資のタイミングも難しい。

ボッシュは電動パワートレインなど電動車の他の主要部品分野ですでに高い競争力を持つことから、経営陣は財務リスクが大きいセル生産への不参入を決めた。

LEAPは同社とGSユアサ、三菱商事の3社が次世代のリチウムイオン電池技術を共同研究開発するために2013年11月に設立した企業で、出資比率はボッシュが50%、GSユアサと三菱商事がそれぞれ25%。ボッシュの本社所在地シュツットガルトに拠点を置く。

シーオは米国のスタートアップ企業で、リチウムイオン電池と全固体電池の開発を手がける。ボッシュは電池性能を大幅に引き上げてEVの普及に弾みをつける目的で同社を2015年に買収した。

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