仏自動車大手PSAの独子会社オペルは5月29日、ドイツの従業員との間で枠組み協定を締結した。賃金引き上げを凍結する見返りとして国内工場の存続と雇用を保障するという内容。同国以外のオペルの拠点ではすでに労使合意が成立していることから、同社は経営再建に向けた従業員との合意をすべて実現したことになる。
オペルは昨年8月、PSAの子会社となった。オペルは過去20年間、ほぼ一貫して赤字経営が続いていることから11月に業績改善計画を発表。PSAへの傘下入りに伴うシナジー効果を調達から販売に至るすべての事業過程で引き出す方針を打ち出した。まずは2020年までに年11億ユーロを実現し、黒字転換を図る計画だ。
人件費削減の具体策や各拠点への投資計画を取り決める今回の枠組み協定締結に向けた交渉では労使の対立が激化した。一時はメルケル首相など多くの政治家が懸念を表明する事態に発展していた。
29日の合意ではアイゼナハ、リュッセルスハイム、カイザースラオターンの独3工場に投資を行うほか、23年7月までは経営上の理由による整理解雇を行わないことを取り決めた。また、アイゼナハ工場ではSUV「グランドランドX 」を生産することが確定。リュッセルスハイムの研究開発センターはPSAグループの次世代1.6リットルエンジンと、PSAの技術をベースとする全オペル車の開発を引き受けることが決まった。
従業員はこの見返りとして、IGメタルが雇用者団体との間で取り決めた賃上げと一時金の受給を断念する。
オペルは経営再建に向けて独従業員(1万9,000人)の約20%に当たる3,700人を削減する計画。これについてはすでに3,500人が希望退職の募集に応じており、実現のメドが立っている。