ティッセンクルップ社長が辞任

独複合企業ティッセンクルップは5日、ハインリッヒ・ヒージンガー社長が辞意を申し出たと発表した。理由は明らかにしていないが、有力株主との対立や一部の監査役との関係悪化が背景にあるもようだ。監査役会は6日、当面は社長なしで取締役会が経営を行うことを明らかにした。

ヒージンガー社長は2011年に就任し、鉄鋼事業の巨額赤字で一時は経営破たんの寸前に追い込まれた同社を再建した。6月末には印タタ製鉄との間で、両社の欧州鉄鋼事業を合弁化することで最終合意。経営の重荷となっていた鉄鋼事業から完全撤退するとともに、収益力の高い事業に経営資源を絞り込む準備を整えた。

だが、同社株18%を持つスウェーデンの投資会社セビアンと米ヘッジファンドのエリオットは改革が不十分だと批判。ヒージンガー社長はこれを受けて、新戦略を近く発表することになっていた。

同社長は声明で、企業を成功裏に運営するためには取締役会と監査役会が認識を共通化するとともに、株主と監査役会の支持が必要だと指摘したうえで、「ティッセンクルップの将来についての根本的な議論を監査役会が行えるようにするために」辞任することを明らかにした。セビアンは監査役に役員1人を送り込んでいる。

『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が社内情報として報じたところによると、辞任の主な理由はセビアン、エリオットとの対立でなく、筆頭株主クルップ財団(出資比率21%)が派遣するウルズラ・ガーター監査役の支持を失ったことにあるという。

上部へスクロール