ティッセンクルップで監査役会長も辞任

独複合企業ティッセンクルップは16日、ウルリヒ・レーナー監査役会長が辞意を表明したことを明らかにした。今月末で辞任する。同社ではハインリッヒ・ヒージンガー社長が今後の経営方針をめぐる対立を受けて今月上旬に辞任したばかり。監査役と取締役のトップが相次いで辞任することで、経営の混迷は深まりそうだ。

レーナー監査役会長は声明で、「大株主の信頼と経営戦略に関する監査役会の共通理解は私の仕事の基盤であり、株主と従業員、顧客のためにわが社を成功裏に発展させるというベルトルト・バイツ(2013年に99歳で死去した筆頭株主クルップ財団の前会長)への約束の前提だった」と指摘。こうした基盤と前提がなくなったため辞任することを明らかにした。

背景にはティッセンクルップの経営方針に対する一部株主の強い批判がある。

同社は6月末、印タタ製鉄との間で両社の欧州鉄鋼事業を合弁化することで最終合意。経営の重荷となっていた鉄鋼事業から完全撤退するとともに、収益力の高い事業に経営資源を絞り込む準備を整えた。

だが、ティッセンクルップ株18%を持つスウェーデンの投資会社セビアンと、米ヘッジファンドのエリオットは改革が不十分だと批判。収益力を高めるために鉄鋼以外の事業も分離して同社を解体するよう要求した。ヒージンガー社長はこれを受けて辞任し、ギド・ケルクホッフ取締役が臨時社長に就任した。

レーナー監査役会長は声明のなかで「わが社の解体とそれに伴う多くの雇用の喪失は選択肢ではあり得ないことをすべての利害関係者が理解することに私の(辞任)決定が寄与することを願う」と強調し、名指しを避けながらもセビアンとエリオットを批判した。

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