ドイツの自動車大手がガソリン車の排ガスに関する分野で違法なカルテルを結んでいた疑いが浮上してきた。週刊誌『シュピーゲル』が欧州連合(EU)欧州委員会の調査として報じたもので、ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲン(VW)、アウディ、ポルシェの5社が関与していたという。5社をめぐってはディーゼル車の排ガス処理の分野でもカルテル疑惑が昨年7月に発覚している。
同誌によると、5社は◇EUの排ガス基準を満たすためにディーゼル車では搭載が不可欠となっている微粒子捕集フィルターのガソリン車への投入を回避する◇EUがガソリン車の粒子状物質(PM)排出基準を厳格化する時期を可能な限り先送りするよう、ロビー団体を通して働きかける――ことを取り決めていたという。
EUのPM規制をみると、ディーゼル車では1992年7月に導入された「ユーロ1」の段階で走行1キロメートル当たりの排出許容上限が140ミリグラムに設定。同許容値はその後、厳格化されていき、09年9月導入の「ユーロ5a」では5ミリグラムへと引き下げられた。
一方、ガソリン車では「ユーロ4」までPM規制が適用されず、ユーロ5aで初めて適用された(対象は直噴エンジン車のみ)。ガソリン車のPM規制導入時期がディーゼル車よりも遅くなった背景に、独5社の委託を受けたロビー団体の活動があった可能性を排除できなくなっている。
独5社はディーゼル車の排ガス処理の分野で、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するために用いるアドブルー(尿素水溶液)のタンク容量を小さくすることを2006年以降、取り決めていた。容量を小さくしたのは、大きいとコストがかさむためだ。
欧州委はアドブルータンク容量に関するカルテル調査を進めるなかで、5社がガソリン車のPM分野でも違法な取り決めなどを行っていた容疑をつかんだという。