中国企業が独工作機械メーカー買収を断念

中国企業・煙台市台海集団(Yantai Taihai)がドイツの工作機械メーカー、ライフェルト・メタル・スピニングの買収計画を断念した。ドイツ政府が同計画に対する拒否権行使方針を固めたことから、経済省に提出していた計画承認申請を取り下げた。ライフェルトの筆頭株主であるゲオルク・コフラー氏が1日、明らかにした。煙台市台海をめぐっては、同社が金属加工の仏マノワール(Manoir)を買収する計画に対してもフランス政府が拒否権を行使しており、中国企業の買収活動に対する欧州諸国の対応は厳しくなってきたもようだ。

ライフェルトは高性能金属部品を製造するための工作機械を手がけており、主に自動車・航空宇宙業界に製品を供給している。ただ、同社製機械は原子力分野でも利用できることから、ドイツ政府は煙台市台海の買収計画を懸念。メディア報道によると、1日の閣議で計画不承認を決定する予定だった。

独経済省は今年初、煙台市台海が原子力産業のサプライヤーである独チューブス・プロダクションを買収する計画を承認した。このため政府がライフェルト買収の不承認方針を固めたことは、方針転換をうかがわせる。

中国政府は電動車やロボットなど計10分野で世界を主導する国になるという長期戦略「中国製造2025」を受けて、自国企業が欧州などの国外で展開する買収活動を積極的に支援している。その一方で自国市場での外資の活動を大幅に制限していることから、欧州企業の間には不満が強い。ドイツでは産業ロボット大手クーカが中国家電大手の美的集団に買収されたことを受けて、中国資本による自国企業の「買い漁り」に対する風当たりが強くなっており、独政府は7月下旬、独送電網運営会社50ヘルツに中国国営の国家電網が出資する計画を、舞台裏での画策を通して阻止した。

中国政府は国外からの批判を受けてここ数カ月、外資規制の緩和姿勢を示してきたが、50ヘルツへの出資計画をドイツ政府が阻止したことを受けて27日、「ドイツの政策転換を注視していく」との声明を発表。中国商務部は自国企業への外資の戦略出資計画について、安全保障上の審査を強化する法案を公表した。

煙台市台海は山東省に本社を置く企業で、2001年に設立された。従業員数は8,500人。同社株85%を持つWang Xuexin氏は中国共産党員で、煙台市政府の金属産業の規制を統括していたことがある。保有資産は推定85億人民元(10億7,000万ユーロ)に上る。

ライフェルトは煙台市台海による買収計画がとん挫したことを受けて、新規株式公開(IPO)を行う計画だ。年内にも実施するとしている。

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