ドイツ政府は29日の閣議で、年金法改正案を了承した。公的年金の料率と給付水準を2025年まで一定水準に保つことで現役世代の負担が増えないようにするとともに、給付額の減少で年金受給者の生活水準が低下することも抑制するのが主な狙い。議会での可決を経て来年1月1日付で施行する考えだ。
与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)は2月の政権協定で、年金制度の改革を取り決めた。具体的には◇公的年金受給開始時点の年金額が現役世代の手取り収入額の何パーセントに当たるかを示す所得代替率を25年まで現在の48%に据え置く◇労使が折半する年金保険料の料率を20%以内に抑制する◇1991年以前に生まれた子供の養育のために仕事ができなかった親(主に女性)の公的年金受給額を一段と拡大し、92年以降に子供が生まれた親との格差を縮小する◇障害年金の支給額を受給者が年金受給開始年齢(法律の規定に基づいて毎年引き上げられており19年は65歳8カ月となる)まで働いたと仮定して算出する◇年金保険料を35年以上、納付した就労者に生活保護を10%上回る「最低年金」を保障する◇軽減社会保険料率が適用される「ミディジョブ(Midi-Job)」の適用対象となる賃金の上限をこれまでの850ユーロから1,300ユーロへと引き上げ、低所得者の社会保険料負担を軽減する――で合意した。
今回の法案はこれを具体化したもので、25年までの年金財政は約320億ユーロ拡大する見通しだ。景気の低迷で年金財政が悪化した場合は税金による補填額が膨らむことになる。
与党は同日、労使が折半する失業保険の保険料率についても大幅に引き下げることで合意した。現在3.0%の料率を来年から2.5%とする。ただ、イエンス・シュパーン保健相は介護保険料率を来年0.5%引き上げることを要求していることから、失業保険料負担軽減の効果は相殺される公算が高い。政府は失業保険改革案を9月17日の閣議で了承する予定。