電機大手の独シーメンスがイラクの電力インフラ再建に向けた受注活動を積極的に展開している。競合の米ゼネラル・エレクトリック(GE)も受注獲得を狙っていることから、ドイツ政府はシーメンスを後押し。23日にはシーメンスのジョー・ケーザー社長と独経済省のトーマス・バーライス政務次官がバグダッドを訪問し、ハイダル・アル・アバーディ首相と交渉した。『ハンデルスブラット』紙が24日付で報じた。
イラクは1980年の対イラン戦争以降、相次ぐ紛争や経済制裁を受けてインフラが悪化している。経済再建にはインフラの整備が欠かせないことから、政府は巨額の投資を計画。投資規模は10億ユーロのケタ台の後半〜130億ユーロ超に上ると推測されている。
同紙によると、シーメンスは発電施設・送配電網の建設のほか、若年層の職業研修、6万人規模の雇用創出効果をイラク政府にアピールしているもようだ。発電所については計11ギガワットの施設を開設し、2,300万人が安定供給を受けられるようにする考え。
ドイツ政府は「ヘルメス貿易保険」を通して支援していく。先週にはアンゲラ・メルケル首相がアバーディ首相に電話し、シーメンスと契約するよう働きかけたという。
シーメンスは2015年、エジプト政府からの熱電併給型ガス発電所3カ所を受注した。発電容量は計14.4ギガワットで、4,000万人分の需要に相当する規模だったにもかかわらず、わずかは27.5カ月で完成させることに成功した。同社は今後これを、イラクや他の国でモデルケースとして活用していく考えだ。
シーメンスは16年、イラク政府との間で包括的なエネルギーパートナーシップを締結した。発電施設・送配電網の開発・拡充に向けたコンサルティングを行っている。この事情は電力インフラの受注競争で有利に働くとみられる。