ディーゼル車の走行禁止を回避する手段の1つとしてドイツ政府が排ガス浄化装置(尿素SCRシステム)の後付け方針を打ち出したことを受けて、自動車部品メーカーが同システムの販売に向けた準備を進めている。特需を見込めると予想しているためで、浄化装置製造の独オーバーラント・マンゴルトのフベルト・マンゴルト社長はロイター通信に「来年初頭にも最初の製品を市場投入できると思う」と発言。技術会社ドクター・プライSCRテクノロジーのマルティン・プライ社長も来年5〜6月に供給できるようになるとの見通しを示した。
独政府・与党は2日、都市の大気浄化に向けた政策案で合意した。旧型ディーゼル車の走行禁止を回避することが狙いで、窒素酸化物(NOx)濃度の高い都市とそれらの都市の手工業・配達業者を対象に、尿素SCRシステムの後付け費用を補助。また、NOx濃度が特に高い14都市では旧型ディーゼル車を保有する通勤者などに、尿素SCRシステムの後付けないし優遇買い替えの選択権を認める。
尿素SCRシステムの後付けないし優遇買い替えの対象となるのは、欧州排ガス基準「ユーロ4」「ユーロ5」の対応車でNOx排出量が270ミリグラム以上のモデル。政府は14都市の通勤者などが尿素SCRシステムの後付けを行う場合、その費用を自動車メーカーに負担させる考えだ。
自動車メーカーは優遇買い替え措置の実施を確約しているものの、後付けについては否定的ないし消極的な姿勢を示している。後付け措置の実施を強制することは法的に難しいことから、政府は今後の協議を通して自動車メーカーの同意を取り付けたい考えだ。
この問題に絡んでプライ社長は、買い替えの対象となる最新の排ガス基準(ユーロ6d-TEMP)を満たしたディーゼル車が少ないことを指摘。メーカーは一部の車両の後付け費用を負担せざるを得なくなるとの見方を示した。
後付け用の尿素SCRシステムは、連邦陸運局(KBA)がガイドラインと技術仕様を制定しないと製造・販売できない。マンゴルト社長はこれを踏まえ、ガイドラインと技術仕様の速やかな策定を要求した。