中国に対する警戒感がドイツの経済界でこれまで以上に強まってきた。中国事業に伴うリスクが近年、高まっているためで、独産業連盟(BDI)は加盟企業に中国依存の低減を呼びかける意向だ。BDIが作成した未公開のポジョションペーパー案をもとにロイター通信が報じた。
中国政府は同国で事業を行う外資に対し現地企業との合弁設立を義務づけ、これを通した技術移転を強要している。また、中国企業による知財権侵害の取り締りを積極的に行わないほか、外資による中国市場での活動を強く制限している。これらの問題に対する独・欧州企業の不満は2000年代からあったものの、最近は規制が一段と強化されており、先行き懸念が強まっている。
情報漏えいを防ぐために本社などとの通信に仮想プライベートネットワーク(VPN)を用いる外資に対し、国の認証を受けたVPN事業者の利用を義務づける中国のサイバーセキュリティ法はその一例で、外資は企業秘密が筒抜けになることを恐れている。
中国政府が昨年夏に公表した輸出管理法草案も独経済界の警戒を引き起こしている。同国の経済的な利害に反する輸出を規制することを狙った同草案には意味があいまいな言葉が用いられているうえ、中国製部品を搭載した製品を第3国が輸出する場合でも規制の対象になることが明記されているためだ。
BDIはこうした状況を踏まえて「パートナーとシステミックな競合―国家が統制する中国経済にわれわれはどのようにかかわるべきか?」と題するポジションペーパー案を作成した。
同案は中国市場の「真の開放」は今後もおそらくないと予想。共産党が経済・社会の全領域をコントロールする中国の統制経済と「われわれの開かれた市場経済モデル」は相いれず、競合関係にあると問題の根底を指摘している。
中国のダイナミックな成長は販売、調達の両面で重要だが、「中国への関与に伴うリスクを調査することもいや増して重要になっている」として、「場合によってはサプライチェーン、生産拠点、販売市場の多様化を通して依存を最低限度に引き下げていく」ことが重要だと結論づけている。
一方、ドイツとフランスの在中国大使は現地経済誌『財新』への共同寄稿文で、外資に対する不当な制限の廃止を中国政府に訴えた。中国企業が欧州で得ているのと同じ待遇を欧州企業に与えるよう求めている。具体的には◇農産物に対する迅速かつ科学的に根拠のある手続きの導入◇合弁設立義務の廃止◇サイバーセキュリティ措置の導入が事業活動の障害と差別につながらないことの保証◇知財権保障の改善――の4点を要求した。