排ガス浄化装置の後付け、VWとダイムラーが費用負担を受け入れ

ドイツのアンドレアス・ショイアー交通相は8日、独自動車大手の代表と会談し、旧型ディーゼル車に排ガス浄化装置(尿素SCRシステム)を後付けする費用を負担することについてフォルクスワーゲン(VW)とダイムラーの2社から確約を得た。自動車業界は浄化装置後付けに否定的な立場を取っているものの、ベルリンやシュツットガルトなど主要都市で旧型車両の走行が早ければ来年上半期中に禁止される可能性を背景にメーカーに後付け費用の負担を求める圧力が高まっていることから、譲歩した格好だ。

欧州連合(EU)加盟国はNOxの濃度を1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)以下に抑制することを義務づけられている。ドイツでは多くの都市で同規制を順守できない状況が続いていることから、環境保護団体はこれらの都市の大気浄化策が不十分だと批判。NOx排出量が多い旧型ディーゼル車の走行禁止を求めて裁判を起こした。すでに7都市を対象に走行禁止を命じる判決が下されている。

走行禁止の開始時期はシュツットガルトで来年1月1日、フランクフルトで同2月1日と目前に迫っている。政府・与党は走行禁止を回避するために速やかな対策を実施しなければならない状況に追い込まれたことから、都市の大気浄化に向けた政策案を10月初旬に取り決めた。

同政策案にはNOx濃度50マイクログラム超の都市で旧型ディーゼル車の保有者(周辺地域からの通勤者を含む)が◇尿素SCRシステムを後付けする◇優遇下取り価格で車を買い替える――のどちらかを選択できるようにする方針が盛り込まれた。

政府・与党は後付け費用を自動車メーカーに負担させることで合意した。だが、BMWは負担を拒否。VWは費用の8割を引き受ける意向を示したものの、他のメーカーも同様の措置を取ることを前提としていた。

こうした姿勢に対する世論の批判が強いことから、ショイアー交通相は今回、メーカーの代表と会談。譲歩を引き出した。VWとダイムラーは欧州排ガス基準「ユーロ5」に対応したディーゼル車の後付け費用を1台当たり最大3,000ユーロ負担する。対象となるのはNOx濃度が50マイクログラムを超える14都市とフランクフルトで保有されている車両。その他の地域の車両はユーロ5対応であっても、両社は後付け費用を負担しない。

BMWは後付け費用負担の拒否姿勢を堅持したものの、走行禁止の対象となる車両の保有者を優遇下取りなどの形で最大3,000ユーロ支援する。

後付け用尿素SCRシステムを市場投入するためには連邦陸運局(KBA)の認可を得なければならない。そのための準備に多くの時間を要するため、市場投入は早くても2021年になるとみられている。ユーロ5対応ディーゼル車は早ければ来年9月からシュツットガルトなどで走行を禁止される恐れがあるため、間に合わない可能性がある。

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