中国の対EU直接投資40%減少、買収規制の強化など背景に

中国の対欧州連合(EU)外国直接投資(FDI)が大幅に減少したことが、独メルカトル中国研究所(MERICS)と米調査会社ロジウム・グループの調べで分かった。それによると、2018年の同FDIは前年比40%減の173億ユーロとなり、4年ぶりの低水準を記録した。中国の対外投資規制と流動性不足を背景に同国のFDI総額が減少しているほか、中国からの投資に対する規制を強化する動きがEU内で高まっていることが反映された格好だ。

EUを対象とする中国のFDIは10年時点で21億ユーロにとどまっていた。だが、その後は拡大傾向が続き、ピークの16年には372億ユーロを記録した。

中国の対外投資は同政府が産業の高度化に向けた長期戦略「中国製造2025」を打ち出した15年に加速した。先端技術の獲得に向けて外国企業の買収を奨励したためで、これを機に中国資本による独・欧州企業の買収は活発化。16年にはスイスの農業化学大手シンジェンタを対象とする中国化工集団の買収と、独産業ロボット大手クーカを対象とする美的集団の買収計画が相次いで発表された。

クーカは製造業のIoT化に向けてドイツが推進する「インダストリー4.0」計画の中心的な企業であることから、美的集団の同社買収は強い警戒感を引き起こした。独政府はその後、貿易政令(AWV)を2度改正。中国企業によるドイツ企業の“買い漁り”に歯止めをかけた。中国の国有送電会社である国家電網が試みた独送電事業者50ヘルツへの資本参加も阻止した。

中国資本による買収に歯止めをかける取り組みはEUレベルでも行われており、欧州議会は2月、域外からの直接投資に対する審査を厳格化するための規則案を賛成多数で可決した。また、独仏政府はEUの産業競争力強化に向けた政策の一環として、外資からの重要産業の保護を欧州委員会に働きかける意向だ。

EUサイドのこうした動きを受けて、中国からのFDIは17年に22%減少。18年は減少幅が約2倍に拡大した。

中国の対EU直接投資を分野別でみると、18年に最も大きく伸びたのは金融で、前年の3億ユーロから28億ユーロへと拡大した。このほか、ヘルスケア、バイオテクノロジー、消費財、サービス、自動車でも大きく伸びている。一方、これまで積極的な投資対象だった機械・電機、輸送・エネルギー供給・インフラ、不動産では減少した。

国別では3大投資先である英独仏の割合が前年の71%から45%へと大きく低下した。対英が63%から24%へと大幅に下がったためで、対独は4%から12%へと拡大した。地域別では北欧の割合が4%から26%へと大きく伸びている。

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