墺センサー大手AMSは4日、独照明大手オスラムに対し同社が実施した株式公開買い付け(TOB)でTOBの成立条件を満たせなかったと発表した。オスラムはこれを受けて、独立を保ちながら自力で競争力を高めていく方針を表明したものの、AMSは市場やヘッジファンドを通してこれまでにオスラム株19.99%を取得し筆頭株主となったうえ、買収を断念していないことも明らかにしており、オスラムの先行きは依然として不透明だ。
オスラムに対しては7月、米投資会社ベイン・キャピタルとカーライルの企業連合が1株当たり35ユーロでTOBを実施する方針を表明。これに対しAMSは同38.5ユーロの対抗提案を行ったものの、ベインが企業連合のパートナーを米投資会社アドベントに切り替えたうえでAMSを大幅に上回る条件でTOBを実施する意向を打ち出したことから、AMSは27日に買取価格を41ユーロへと引き上げた。これにより全株を取得した場合の費用は37億ユーロから40億ユーロへと膨らむことになった。
それにもかかわらず、TOB期限の10月1日までにAMSが確保した株式はTOBとは別に取得した19.99%を加えても51.6%にとどまり、TOBの成立条件とした62.5%を約11ポイント下回った。
TOBが失敗したことで、AMSは今後1年間、オスラムに対する新たなTOBを実施できなくなった。だが、29.99%までは株式を買い増すことができるため、この可能性を追求し、オスラムに対する影響力を高める戦略とみられる。
ベインとアドベントの企業連合は現在、オスラムの資産査定(デューデリジェンス)を実施中。オスラムの以前の発表によると、資産査定の終了後は全発行済み株を対象に買い取り提案を行うことになっている。だが、AMSには保有株を手放す考えがないことから、オスラムの完全買収は難しい。
完全買収できないと他の株主の制約を受け、買収対象企業の構造改革を自由に行うことができないため、改革で企業価値を高めて転売を図る投資会社にとっては買収の魅力が低下することになる。
買収価格も大きなネックとなる可能性がある。ベイン/アドベントは1株当たり38.5ユーロとしていたAMSのTOBを「上回る」価格で買い取る意向を表明した。AMSが41ユーロでのTOBに失敗したことから、同企業連合はこれを上回る価格を提示しなければならない。
こうした状況を踏まえると、ベイン/アドベントがTOBに踏み切るかどうか、また、踏み切ったとしても成功するかどうかは定かでない。