独最大与党キリスト教民主同盟(CDU)のアンネッテ・クランプクランプカレンバウアー党首は10日、年内に党首を辞任する意向を表明した。テューリンゲン州首相選挙への対応の不手際で党の低迷に拍車がかかったためで、CDUの次期首相候補選にも立候補しない。同党首に対しては以前から力量不足が指摘されており、今回の辞意表明でその評価を自ら認めた格好だ。
テューリンゲン州では5日、州首相指名選挙が州議会で行われ、中道右派・自由民主党(FDP)のトーマス・ケメリッヒ議員が現職のボド・ラメロー首相(左翼党)を破って新首相に選出された。その際CDUは移民排斥を訴える極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」とともにケメリッヒ氏に支持票を投じた。
AfDにはナチ思想を信奉する党員も多く、他の政党はこれまで、直接・間接を問わず一切の協力を拒否してきた。5日の州首相指名選挙でFDPとCDUが形の上とはいえAfDと協力したことは、ナチスの歴史への反省に基づく戦後ドイツの政治理念からの逸脱であり、政界には衝撃が走った。
FDPのケメリッヒ議員は同指名選挙に出馬する意向を以前から表明していた。このためAfDが戦略上の計算から同議員に支持票を投じる可能性を排除できない状況にあり、クランプカレンバウアー党首は選挙に先立ってCDUテューリンゲン州支部のマイク・モーリング支部長(州議会院内総務)に、ケメリッヒ議員に票を投じないよう強く促していた。CDUの州議会議員はこれを無視してケメリッヒ議員に投票したことから、クランプカレンバウアー党首の統制力の弱さが露呈した格好だ。同党首は選挙後、州議会の解散・総選挙に向けて動くようCDUの州議会議員団に迫ったが、この要求も貫徹できなかった。
同党首の下でCDUの支持率が低迷し、次期連邦議会(下院)選挙に向けた見通しが暗かったこともあり、辞意を決めたもようだ。国防相にはとどまるとしている。
クランプカレンバウアー氏は2018年12月、CDUの党首に就任した。メルケル首相は21年秋までに引退する意向を表明しており、同党首は順調にいけば、次期連邦議会選挙でCDUと姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)の首相候補となるはずだった。
次期党首候補(CDU/CSUの首相候補)としてはノルトライン・ヴェストファーレン州のアーミン・ラシェット州首相と、前回の党首選挙でクランプカレンバウアー氏に敗れたフリードリヒ・メルツ元院内総務が有力視されている。