自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)を相手取って独消費者センター全国連盟(vzbv)が起こした集団代表訴訟に伴う裁判外の和解交渉が14日、決裂した。vzbv側の弁護団が不当な手数料を要求したとしてVW側が交渉を打ち切ったためだ。ただ同社は、同訴訟に参加した顧客に支払う総額に関しては和解交渉で合意が成立していたとして、最大で計8億3,000万ユーロを支払う意向を表明した。
vzbvは2018年11月1日、VWを提訴した。違法なソフトウエアを搭載したVWグループ車の購入者が損害賠償を受け取れるようにすることが狙い。集団代表訴訟制度が発効した同日付でブラウンシュヴァイク高等裁判所に訴状を提出した。集団代表訴訟制度では被害を受けた消費者でなく、認証を受けた団体が裁判を起こすことになっている。
vzbvは「EA189」というディーゼルエンジンを搭載するVWブランド乗用車、アウディ、シュコダ、セアトの車両を購入した消費者に訴訟への参加を呼びかけた。参加資格者は該当車両を2008年11月1日以降に購入した消費者250万人で、そのうちの46万人が参加した。
VWとvzbvは1月初旬、裁判外の和解交渉を行うことを明らかにした。交渉では訴訟に参加した顧客にVWが1台当たり1,350〜6,200ユーロを支払うことで合意が成立していた。
VWによると、vzbv側の弁護団が支払い手続きの手数料として5,000万ユーロを要求したことが決裂の原因となった。VWは要求額を裏付ける具体的な根拠がないと指摘。また、要求額の鑑定を独立の第三者に依頼するという同社の提案を弁護団は拒否したとしている。
これに対しvzbvは、「透明で信頼に値する、消費者にとって確実な支払いシステムを実現する用意がVWになかったことが原因となり決裂した」と反論。VWがプレスリリースで流布した説明は偽りだと批判した。
法廷外和解が実現しなかったことから、ブラウンシュヴァイク高裁は今後、判決を下す見通し。どちらが勝訴しても係争は最高裁の連邦司法裁判所(BGH)に持ち込まれる公算が高い。VWは、vzbvが仮に勝訴しても訴訟参加者が同社から損害賠償の支払いを受けるためには、地方裁判所に改めて提訴しなければならないことを指摘。そうした裁判で最終判決が出るには数年を要するとして、VWが今回、行った和解金の支払い提案を受け入れるよう促している。