ロベルト・コッホ研究所(RKI)のラース・シャーデ副所長は24日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて導入した制限措置の緩和を、国と州の決議の範囲を超えて推し進めることは危険だとの認識を表明した。ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)など一部の州は同決議で認められていない営業規制緩和に踏み切っており、アンゲラ・メルケル連邦首相は23日の連邦議会(下院)で、「大胆すぎるとは言わないまでも極めて大胆だ」と批判。各州が足並みをそろえずに独自の緩和を進めることで、感染拡大の抑制に向けたこれまでの取り組みの成果が台無しになることに危機感を表明した。シャーデ副所長はメルケル首相を援護射撃した格好だ。
ドイツでは感染拡大のスピードが大幅に鈍化したことから、メルケル首相と国内16州の首相は15日、新型コロナの感染拡大を防ぐために3月から導入している規制を一部解除することを決議。まずは週明けの20日から小売店の規制を緩和した。床面積800平方メートル以下の店舗は営業を再開できるようになった。自転車販売店と自動車販売店、書店は床面積の広さにかかわらず営業が可能だ。
NRW州はこの決議から逸脱する形で、床面積800平方メートル超の家具販売店に対しても営業再開を認めた。ラインラント・ファルツ州では集客力の高い大型アウトレットセンターが再オープンしている。メルケル首相は連邦議会で州名の名指しを避けながらも、こうした動きを批判した。
ドイツの新規感染者数は減少傾向が続いている。それでも1日当たりの人数は2,300人を超えており、状況は依然として厳しい。RKIのシャーデ副所長はこれを踏まえ、1日当たりの感染者数が数百人まで低下しなければ制限措置を一段と緩和することはできないと指摘した。
メルケル首相はさらなる緩和に踏み切るかどうかを5月6日に開催予定の州首相との会議で決定する意向を示している。制限緩和の影響を見極めるためには2週間の時間が必要とみているためだ。30日に予定する州首相との次回の会議では制限措置の変更について協議しないとしている。