ドイツ銀がフィンテックに出資、サプライチェーンファイナンス分野で

独銀最大手のドイツ銀行は24日、プラットホームベースでサプライチェーンファイナンスを手がける独フィンテック、トラクスペイ(Traxpy)に出資すると発表した。同分野でトラクスペイに張り合う力がないと判断。トラクスペイと協業することで競争力を高める意向だ。出資額と出資比率は明らかにしていない。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、出資比率は最大10%に上るという。

サプライチェーンファイナンスはサプライチェーンに参加する企業の資金繰り支援するサービス。参加企業の資金繰りが悪化するとサプライチェーンの運営に支障が出ることから、そうしたリスクを低減する効果がある。

トラクスペイはドイツ銀の元行員であるマルクス・ルップレヒト社長が2009年に設立した同分野の新興企業で、フランクフルトに本社を置く。同社のプラットホームを利用することで、買い手企業は◇資金繰りにゆとりがあるときはサプライヤーに代金を早期に支払い、その分の割引を受ける◇資金繰りのゆとりが少ないときプラットホーム経由で銀行からつなぎ融資を受ける――ことが可能になる。サプライヤーは売掛金を早期に回収しやすくなることから、資金繰りリスクを低減できる。同社のプラットホーム上で行われる取引の総額は年10億ユーロを超える。

ドイツ銀で法人融資事業を統括するダニエル・シュマンド氏は、新型コロナ危機の影響で資金繰りが悪化する企業が増えている現状はサプライチェーンファイナンス市場の追い風になるとの見方を示した。

トラクスペイはドイツ銀以外の金融機関からも投資資金を調達し、協業関係を構築することに前向きな姿勢を示している。サプライチェーンファイナンス分野で強い競争力を持つ米国のプラットホームに対抗するためには、銀行やフィンテックがそれぞれプラットホームを運営していている欧州の現状を改める必要があるためだ。ルップレヒト社長は「ただひとつのプラットホームを利用することで、(サプライチェーンに参加する)顧客企業とサプライヤー、およびそのファイナンスパートナーの双方に高い透明性と効率性がもたらされるというメリットが生まれる」と述べ、プラットホーム統合の意義を強調した。

ドイツ銀のシュマンド氏は、自行でできないことを無視したり悪く語ることは誤った態度だと明言。「トラクスペイという経験豊かな良きパートナーを得たことで、わが行はこの分野で顧客にさらなるソリューションを提供していく」と述べ、ウィンウィンの関係構築に意欲を示した。

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