ティッセンが「グリーン製鉄」へ、25年にまず40万トン

鉄鋼大手の独ティッセンクルップは28日、ペーター・アルトマイヤー経済相などをデュースブルクにある製鉄所に招き、二酸化炭素(CO2)を排出しない直接還元製鉄施設の建設構想を説明した。政府は国内鉄鋼業の構造転換に向けた支援策を先ごろ打ち出しており、これに呼応する形で生産のグリーン化を推し進める。

同社は再生可能エネルギーで作る水素と、再生エネを併用した「グリーン製鉄」施設をデュースブルク製鉄所内に建設する。2025年に完成させ、まずは年40万トンを生産。30年には300万トンへと拡大する。同社の現在の生産高(1,100万トン強)をもとに計算すると、製品の4分の1以上をグリーン化することになる。

ティッセンは30年までに自社のCO2排出量を30%削減する目標を掲げている。デュースブルク製鉄所はドイツのCO2排出量全体の2%を占めており、同拠点のグリーン化は同国の排出削減にも大きく貢献する。

マルティーナ・メルツ社長は、環境により優しい鉄鋼生産は国の財政支援があって初めて実現すると強調。政府支援に期待を表明した。アルトマイヤー経済相は「鉄鋼はドイツのキー産業だ。環境にやさしいとともに競争力のあるグリーンな鉄鋼が将来、ドイツで作られるようにするためにあらゆることをする」と応えた。

ドイツ政府は7月の閣議で、鉄鋼産業支援策を了承した。国内のCO2排出削減を図るとともに、厳しい状況に置かれている同業界が競争力を長期的に維持できるようにする狙い。具体的には、中国など国外の不当な補助金とダンピングに厳しく対処していくほか、CO2排出権をこれまでに引き続き一定の範囲内で、無料で割り当てる。環境面では製鉄に水素を投入することでCO2の排出を削減ないしゼロ化する技術転換を、資金やインフラ面で支援していく考えだ。鉄鋼業界の試算によると、これには約300億ユーロの投資が必要になる。国の支援総額は現時点で決まっていない。

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