ドイツ連邦統計局が4日発表した5月の貿易収支(暫定値)は営業日数・季節調整ベースで10億ユーロの赤字となり、前月の黒字(31億ユーロ)から大幅に悪化した。貿易赤字の計上は現在の統計基準に移行した2008年1月以降で初めて。材料・部品不足で輸出品の生産が滞っていることや、輸入物価の上昇に輸出物価が追い付いていないことが響いた可能性がある。5月は輸入物価が前月比で0.9%上昇したのに対し、輸出物価は同0.6%の伸びにとどまった。
輸出高は1,258億ユーロとなり、前月を0.5%下回った。欧州連合(EU)域外向けは2.3%増えたものの、ユーロ加盟国向けが2.8%、EUのユーロ非加盟国向けが2.9%減少。足を強く引っ張った。
輸入高は2.7%増えて1,267億ユーロに達した。すべての輸入先で増加。増加幅はユーロ圏で1.6%、EUのユーロ非加盟国で4.7%、EU域外で2.9%に上った。
ウクライナに侵攻しEUが制裁を科しているロシアとの貿易をみると、輸出高は29.4%増の10億ユーロとなり、約60%減となった前月から大幅増に転じた。公共報道ZDFによると、制裁の対象となっていない医薬品の輸出が増えた。医薬品価格は原料高で上昇しており、この事情も5月の輸出増につながった。
対露輸入高は9.8%減の33億ユーロに縮小したものの、依然として巨額の貿易赤字を計上している。ロシアへの依存度が高い化石燃料は価格が高騰しており、輸入量を減らしても赤字は今後も続く見通しだ。
1~5月の輸出高は営業日数・季節調整ベースで6,160億ユーロとなり、前年同期を11.2%上回った。ユーロ圏向けが11.8%、EUのユーロ非加盟国向けが11.1%、EU域外向けが10.8%の幅で増えた。
1~5月の輸入高は5,936億ユーロで、25.6%増加した。EU域外からが36.6%増と特に大きく拡大。ユーロ圏は18.5%増、EUのユーロ非加盟国は10.7%増だった。貿易収支は224億ユーロの黒字を計上している。
非調整ベースの5月の輸出高は前年同月比19.0%増の1,303億ユーロ、輸入高は33.6%増の1,298億ユーロだった。