スウェーデンのリチウムイオン電池メーカー、ノースボルトがドイツ北部のハイデに工場を建設する計画を先送りする可能性が出てきた。ドイツの電力価格が高騰しているためで、ピーター・カールソン最高経営責任者(CEO)は日曜版『フランクフルター・アルゲマイネ(FAS)』紙に、現在の価格ではエネルギー集約のセル生産で採算割れとなる恐れがあると述べた。
同社は3月、ハイデ工場の建設計画を発表した。年産能力は電気自動車(BEV)およそ100万台分に相当する60ギガワット時(GWh)。顧客メーカーのフォルクスワーゲン(VW)、BMW、ボルボ・カーズ向けに供給する。2025年の生産開始を予定している。
カールソン氏は米国での工場建設を検討していることも明らかにした。手厚い補助金を受給できるためで、場合によっては「米国での事業拡大を差し当たり欧州に優先させる可能性」があるとしている。
米国では8月にインフレ抑制法が成立した。電池と電動車の国内生産を促進するため、一定条件を満たした電池に補助金が交付される。補助金の額は電池モジュール1キロワット時(kWh)当たり45ドル。リチウムイオン電池の平均価格が昨年、同137ドルだったことを踏まえると、車載電池を同国で生産するメリットは極めて大きい。
BEV大手のテスラは米テキサス州オースティンに建設する車載電池工場の完成を、独グリュンハイデの電池工場よりも優先する意向をすでに明らかにしている。