ガリウム砒素(GaAs)ウエハーの有力企業である独フライベルガー・コンパウンド・マテリアルズに顧客からの受注が殺到している。中国政府が半導体の原材料であるガリウムとゲルマニウムの輸出規制方針を打ち出したことを受けたものだ。規制が実施されるとこれらの材料を用いた製品の入手が困難になる懸念があることから、顧客企業は在庫を急ぎ足で積み増している。ミヒャエル・ハルツ社長への取材をもとにロイター通信が報じた。
中国商務省などは3日、ガリウムとゲルマニウムの輸出を8月1日から許可制に改めると発表した。最先端半導体を中国が使用できないようにするため米国主導で構築されている対中包囲網への対抗策と目されている。
ガリウムはアルミニウム生産の副産物から得られる。かつては世界の様々な国で作られていたが、現在は中国がほぼ全面的に独占している。
フライベルガーは年商7,000万~8,000万ユーロの小規模なメーカーだが、スマートフォンの弱い信号を増幅させ基地局に送出する電力増幅器向けのGaAsウエハーの分野で世界市場の65%を握る。同社は米中の半導体摩擦が激化すると予想し、ガリウムの在庫を増やしてきた。このため供給が途絶えても数カ月間は生産を継続できる。
ガリウムの調達先である中国企業は輸出許可に必要な書類を当局に提出し始めている。ハルツ氏によると、中国の輸出事業者は、中国当局はガリウムの輸出停止措置を8月1日付で実施するものの、これらの書類の審査が終了する同月末から9月上旬にかけて輸出を再び解禁するとみている。同氏も、電力増幅器の分野では米国メーカーが強く、中国のスマホメーカーは米サプライヤーに強く依存していることを踏まえ、中国がガリウムの輸出制限を強化することは短期的にはないと予想している。
ただ、3~5年後に中国メーカーが高品質な電力増幅器を自ら製造できるようになれば、状況が変わるとも指摘する。中国当局は同国の輸出事業者が提出する書類を通して、世界のどの企業がガリウムを何のために使用しているかの情報を詳細に把握できるようになることから、輸出禁止措置をピンポイントかつ効果的に行えるようになるという。
ハルツ氏はこうした認識に基づき、「われわれはドイツ、欧州あるいは米国で酸化アルミニウムの生産を通して、ガリウムの生産能力を再び整備する可能性を模索しなければならない」と明言した。リサイクリングも重要だとしている。