電機大手の独シーメンスは13日、ドイツ本国に今年10億ユーロを投資すると発表した。世界全体での投資の50%に相当する。同国は人材・インフラが充実しているほか、取引先や研究機関との強力なエコシステムが存在することから今後も重視していく。
同社は6月、今年の投資額を過去2年間の合計の2倍強の20億ユーロに引き上げる意向を表明した。受注残高が過去最高に達するなど自社製品の引き合いが強いこと受けた措置。ドイツと米国、中国、東南アジアに振り向ける。
ドイツでは南東部のフォルヒハイムとエアランゲンにある医療機器子会社シーメンス・ヘルシニアーズの拠点と、エアランゲンにあるデジタル産業(DI)部門の拠点にそれぞれ5億ユーロを投資する。
DIのエアランゲン拠点ではパワーエレクトロニクス部品と、機械産業向け工作機械制御装置の生産施設を設置する。シーメンスは同施設をリアルとバーチャルな世界を結びつける産業メタバース技術の中核拠点とする意向で、ローラント・ブッシュ社長は「製造方法の革命を起こす」と強調した。
シーメンスはドイツに巨額投資を行うものの、ブッシュ氏は同国の産業立地条件が悪化していると懸念している。同氏は経済紙『ハンデルスブラット』のインタビューで、「わが国はすべてにおいて信じられないほど複雑かつ鈍足になってしまった。これは国際競争のうえでますますデメリットになっている」と明言した。
また、同社が今回ドイツ投資を決定できたのは、生産事業のエネルギー消費量が比較的少ないためだと指摘。エネルギーを大量に消費する金属や化学メーカーにとっては同国で投資を行う意義が急速に低下しているとの認識を示した。