西南ドイツのラインガルテンで27日、電力を交流から直流ないし直流から交流に変換する交直交換所の建設が始まった。同交換所は独北部で発電した電力を南部の需要地域に送る高圧直流送電(HVDC)線「ジュドリンク」の一部をなす。ジュドリンクをはじめとするHVDC線の建設プロジェクトは停滞しており、電力を在来型から再生可能エネルギーへと改める同国の「エネルギー転換政策」に大きな遅れが出る懸念がある。
ドイツ政府は2011年の福島原発事故を受け、原子力発電の全廃を前倒しするとともに、再生エネの拡充を加速する方針を打ち出した。これに伴い風力の強い北部地域で発電した再生エネ電力を需要地の南部へ送るHVDC線を大幅に拡充する必要がある。
だが、住民の反対運動や認可手続きの長期化を受けて建設プロジェクトは大幅に遅れている。経済・気候省によると、全国で計画されているHVDC線の総延長1万4,000キロメートルのうち、これまでに完成したものは2,000キロ、建設中のものは1,500キロにとどまる。
独北部のブルンスビュッテルとラインガルテンを結ぶジュドリンクも当初の計画では22年に完成する予定だった。だが、総延長700キロのうち建設許可が下りたのは現時点で17キロに過ぎない。住民の反対を受け電線を地上ではなく地中に設置する計画へと変更されたことなどが背景にある。
ラインガルテンの交直交換所はジュドリンクで送られる直流電力を交流に変換するもので、計4カ所の建設が予定されている。今回は1カ所目の建設が始まった。
ジュドリンクのHVDC線本体についても認可済み区間での建設作業が年内に始まる。ただ、工事が全区間で行われるようになるのは25年末と予想されており、完工は当初計画より6年遅れの28年となる見通しだ。
ラインガルテンの起工式に出席したロベルト・ハーベック経済・気候相は、認可手続きを迅速化する法律などをすでに成立させたことを指摘。今後はHVDCプロジェクトが速やかに進むとの見方を示した。