希土類採掘が来年にも欧州で開始、グリーンランドに世界最大の鉱床

自動車の電動化など経済の脱炭素化に必要不可欠な希土類(レアアース)の採掘がデンマークの自治領グリーンランドで来年にも始まる見通しだ。鉱山会社タンブレーズ・マイニングのオーナーであるグレッグ・バーンズ氏が独経済誌『ヴィルトシャフツボッヘ』に明らかにした。埋蔵量は世界全体の50%を超えるとしており、欧米など西側諸国はこれまで圧倒的なシェア持っていた中国への依存を大幅に軽減できるという。

グリーンランド南部のタンブレーズ(Tanbreez)で採掘を行う。グリーンランドのヨルゲン・ハメケンホルム副鉱業相は採掘許可を出したことを同誌に明らかにした。

バーンズ氏によると、レアアース酸化物の埋蔵量は1,900万トンに上る。最も割合が高いのはセリウムで35.27%。これにランタンが18.01%、イットリウムが16.63%で続く。全体の30%を希少度の高い重レアアースが占める。

精錬工場は米国に設置する意向で、数カ月後に建設が始まる見通し。欧州に設置することも計画している。精錬設備の費用は技術の進歩で大幅に低下しており、約4,000万ドルにとどまるという。

欧州ではスウェーデン国有鉱山会社ルオッサヴァーラ・キルナヴァーラ(LKAB)がレアアース鉱床を発見したとことを1月に明らかにした。埋蔵量は100万トン以上に上る。ただ、採掘開始が10~15年後の見通しであることから、当面は市場のニーズに応えることができない。

レアアースは電気自動車(BEV)やハイテク製品などに必要不可欠な原料だが、中国が最大の供給元であることから、地政学リスクが高い。同国政府は西側との対立を背景に、半導体の原料であるガリウムとゲルマニウムの輸出を8月から許可制に改めるなど揺さぶりをかけており、重要原材料の調達先を多様化することは喫緊の課題だ。

上部へスクロール