独鉄道・交通労組EVGは28日、ドイツ鉄道(DB)との労使交渉妥結に向けた調停案が組合員投票で承認されたと発表した。これによりDBを対象にEVGが無期限ストライキを実施する可能性はなくなった。ただ、EVGと競合する機関士労組GDLは今秋にDBと労使交渉を開始する予定。GDLは過去の交渉でEVGより強硬な姿勢を取ってきた経緯があることから、DBに圧力をかけるためにストを実施する可能性を排除できない状況だ。
EVGはDBを対象に警告ストを2回実施。3月末のストでは長距離列車が全面運休し、近距離列車の運行にも大きな支障が出た。5月中旬にも50時間のストを実施しようとしたが、スト差し止めを求めてDBが起こした裁判で裁判官が和解交渉を提案したことから中止し、6月末にDBの調停入り提案を受け入れていた。
調停案はトーマス・デメジエール元内相(キリスト教民主同盟=CDU)とハイデ・ファル元ヘッセン州女性・労働・社会秩序相(社会民主党=SPD)が共同作成したもので、◇月給を2段階に分けて計410ユーロ引き上げる◇非課税で社会保険料も賦課されないインフレ調整一時金を2,850ユーロ支給する◇低賃金の被用者(約7万人)を対象に月給を最大1,000ユーロ引き上げる――というもの。組合員投票で52.3%が受け入れを支持したことから、発効が決まった。
DBがGDLと締結している労使協定は10月末に失効する。これに伴い両者は新協定の締結に向けて交渉を開始するものの、GDLは近年、対決姿勢を明確に打ち出しているうえ、EVGに対し強い対抗意識を持つことから、11月以降はストでダイヤが再び乱れる恐れがある。