独金属労組IGメタルは11月に始まる鉄鋼業界の労使交渉で週労働時間を給与据え置きで現在の35時間から32時間に短縮することを要求する意向だ。GX(グリーントランスフォーメーション)に伴い労働力需要が将来的に減少すると予想されることから、労働時間の削減を通して雇用を維持する狙いがある。ただ、ドイツ経済は専門人材不足や電力価格の高止まりなど厳しい状況に置かれており、雇用者団体は負担が一段と増え国際競争力の低下が進むと批判している。
IGメタル鉄鋼部門の北西部地区(ノルトライン・ヴェストファーレン、ニーダーザクセン、ブレーメン)と東部地区(ベルリン、ブランデンブルク、ザクセン)の労使交渉委員会が同交渉方針を7日までに勧告した。IGメタルは18日の執行部会で正式採択する予定だ。
IGメタルは声明で、従来型製鉄からグリーン製鉄への移行期間は労働力需要が増えるものの、その後は縮小するとして、雇用を維持するためには労働時間の短縮が必要だとの立場を表明した。また、週労32時間体制が実現すれば、1週間の勤務日数を現在の5日から4日に短縮することが可能になり、ワークライフバランスを重視する若年層を新戦力として獲得しやすくなると強調した。さらに、ストレスの減少や健康状態の改善により病欠が減り、生産性の向上につながるとしている。
賃金については8.5%の引き上げを要求する。高インフレを踏まえれば特に高い要求水準ではないものの、給与据え置き要求を加味すると、実質的な賃上げ幅は大幅に膨らむことになる。
鉄鋼雇用者団体シュタールは、「欧州の他の国に比べ独鉄鋼業界の労働時間は現在、大幅に短く、電力コストは大幅に高い」と指摘。IGメタルの要求を受け入れたならば企業は国際競争を生き残れなくなると批判した。
昨年春から初夏にかけて行われた前回の労使交渉ではIGメタルが8.2%のベースアップを要求。最終的にベア6.5%、一時金500ユーロで妥結した。
IGメタルは電機、自動車、機械産業を主力分野としている。同分野では週32時間体制の要求を打ち出していないものの、その準備は進めており、イェルク・ホフマン委員長は企業の従業員代表と近日中に協議する予定だ。鉄鋼業界の労使交渉は前哨戦になるとみられる。