ドイツの5Gインフラから中国製品の大半を排除することを内務省が計画している。強権色を強める中国の製品に過度に依存している危うい現状が、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機でこれまで以上に強く意識されるようになったためだ。ただ、ドイツテレコムなど国内通信サービス事業者の反発が強いだけでなく、政府内にも異論があることから、計画が実現するかどうかは定かでない。『南ドイツ新聞』などが報じた。
ドイツの天然ガス消費に占めるロシア産の割合はウクライナ戦争前の時点で55%に達していた。このため、同国産の流入が減少・停止すると、供給不足と価格高騰という大きな問題に直面。資源や原料、部品を特定の国に過度に依存することへの危機感がにわかに高かった。
5Gインフラに占める中国製品の割合は59%に上る。中国との関係が仮に今後、大幅に悪化した場合、代替部品の供給を停止されたり、製品に組み込まれた「バックドア」と呼ばれる不正侵入用の入口を通してスパイや破壊工作が行われる恐れがあることから、内務省は通信インフラでの使用を大幅に制限する意向だ。
具体的には、基幹回線網から華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)製の特定の重要部品を2025年末までに取り除くことを通信サービス各社に義務付ける。また、基地局、アンテナであってもベルリンやライン・ルール地方、フランクフルトなどの大都市にあるものについては中国製品の使用を26年までに全面禁止する。通信インフラ全体で使用できる中国製品の割合は25%が許容上限となる。
既存インフラから中国製品を取り除く費用は通信サービス各社に負担させる。取り除いた後は非中国製品を投入する必要があるため、各社の財務は圧迫される恐れがある。
ドイツが同政策を実施した場合、中国は報復措置を講じる可能性がある。それでもバックドアを利用した通信・ITインフラの破壊工作リスクなどを踏まえると、断固とした措置が必要と内務省は判断しているという。
政府内ではデジタル・交通相のフォルカー・ヴィッシング氏が反対している。高速通信網を速やかに拡大するとした計画が宙に浮くほか、通信各社で発生するコストが最終的に顧客に転嫁される懸念があるためだ。政府は関連省庁間の政策調整を9月最終週に開始するという。