化学業界と政府の会談、低価格電力の確約はなし

化学業界団体や労組と政府のトップ会談(化学サミット)が27日、ベルリンの首相官邸で行われた。ドイツのバリューチェーンの基盤である化学産業の競争力がロシアのウクライナ進攻に伴うエネルギー価格の高騰などで低下し、産業基盤が揺らぎかねないことを受けたもの。政府は認可手続きの簡素化や技術革新の支援を確約したものの、最大の焦点であるエネルギー集約産業向けの低価格電力(産業電力価格)を導入するかどうかについては確約を避けた。独化学工業会(VCI)のマルクス・シュタイレマン会長(コベストロ社長)は、「あまりにも高すぎる電力価格については速やかな(政府)決定への我々の希望は残念ながら満たされなかった」と遺憾の意を示した。

国際的にみてもともと割高だった同国の電力価格はロシアのウクライナ侵攻で一段と上昇し、化学、金属メーカーなどの競争力が著しくそがれている。世界経済の低迷で需要が減少していることもあり、化学各社は厳しい状況に置かれている。

ロベルト・ハーベック経済・気候相はこれを受け、産業電力価格を30年まで時限導入する政策案を提言した。電力取引所価格が1キロワット時(KWh)当たり6セント(年平均)を超えた場合、超過分を国が負担するというもので、各メーカーが使用する総量の80%に同価格が適用される。費用は計250億~300億ユーロに上ると見込んでいる。

だが、政府はコロナ禍やエネルギー高対策で膨らんだ財政を引き締める政策へと転換しており、巨額の助成政策を実施するのは難しい状況だ。欧州連合(EU)の補助金規制に抵触する懸念もあることから、クリスティアン・リントナー財務相やオーラフ・ショルツ首相は反対の意向を示している。電力税・送電料金の引き下げを通して電力価格を下げるという対案もあるものの、政府の足並みはそろっていない。

永遠に残る化学物質と呼ばれるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)の使用を原則的に禁止することがEUで検討されていることに関しては、PFASを一律に禁止するのではなく、個々のリスクを踏まえた柔軟な規制とする意向を政府は今回の会合で表明した。産業界の要請を受け入れたものとみられる。

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