自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は29日、ドイツ国内の完成車工場への生産車種割り当て計画を発表した。グループの中核をなすVWブランド乗用車の収益力強化プログラム「アクセレート・フォワード|ロード・ツー6.5」を踏まえたもので、プラットホームに基づいて各工場に生産車種を割り振り、生産効率と稼働率を引き上げる。これに伴い本社所在地ヴォルフスブルクに新工場を建設する計画は撤回された。
同社は昨年3月、ヴォルフスブルク本社工場に隣接するヴァルメナウ地区に新工場を建設し、電気自動車(BEV)を生産する計画を打ち出した。次世代BEV車台の「SSP」を採用する第1弾のモデルと位置付ける「トリニティ」を2026年から生産する計画だった。
だが、SSPの開発が大幅に遅れ、26年のトリニティ生産開始が不可能になったことから、新工場の建設が中止となる可能性を12月時点で明らかにしていた。もともと、老朽化して稼働率が低下している本社工場の雇用を維持するために立案された計画だったこともあり、収益力強化プログラムを実施するなかで中止となることは半ば予想されていた。トリニティはBEV専門のツヴィッカウ工場で生産する方向だ。
ヴォルフスブルク本社工場についてはBEV「ID.3」の生産を年内に開始するほか、26年からはAセグメントのBEV(SUVモデル)を追加することを明らかにした。30年頃からはSSPベースの「ゴルフ」も生産する。
VWブランド乗用車の収益力強化プログラムは26年までに利益を100億ユーロ増やし、売上高営業利益率で恒常的に6.5%を達成できるようにするというもの。目標を実現するため、事務手続きの簡素・迅速化や開発・生産の効率化、モデルの種類と装備バリエーションの削減を進める。販売台数の少ないモデルは廃止する意向だ。需要や市場の変動に柔軟対応できるよう世界の工場の稼働率を最適化する措置も行う。