第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)が9月25~29日の5日間、ドイツ西部のボンで開催された。ICCMは化学物質の悪影響を最小化するために設置されたもの。今回の会議では2020年以降の新たな枠組みが採択された。議長国ドイツのシュテフィ・レムケ環境相は、化学物質の管理が適切に行われないと世界全体のGDPの最大10%が失われるとする国際連合のデータを踏まえ、化学物質による損失を減らすことは経済的な利益でもあると明言した。新枠組では汚染が気候変動、種の絶滅と並ぶ地球の危機と位置付けられるとともに、これら3つの危機が相互に作用し合っていることが強調されている。
ICCMは02年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」の決議を受けて設立された。「2020年までに化学物質が人の健康・環境に与える著しい悪影響を最小化するような方法で生産・使用されるようにする」との目標(WSSD2020年目標)を掲げる。この目標は現時点で達成されていない。今回採択された枠組みは、すべての化学物質とこれを用いて作られる製品を対象とするもので、製造から使用、廃棄に至る全過程を網羅している。
会議で発表された研究報告によると、鉛中毒で19年に死亡した人は世界全体で550万人に達した。その90%を中・低所得国が占めている。
新枠組にはこうした事情を踏まえ、化学品の危険有害性の分類基準と表示方法を定めた国連の「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」が実施されていない約100カ国を支援することが盛り込まれた。基金を設立し、必要な資金を提供。GHSが実施されるようにする。ドイツは2,000万ユーロを拠出する。
また、化学物質の安全で持続可能な代替製品を開発、生産、使用することを製造業に促すため、インセンティブを導入する。
今回の会議は本来、20年に開催される予定だったが、コロナ禍の発生を受けて延期されていた。