米自動車大手フォードの独ザールルイ工場を売却する方向で進めてきた交渉が決裂した。独法人の経営陣が5日の従業員集会で明らかにした。フォードは同工場の操業を2025年半ばで打ち切ることから、現状では大規模な人員削減が避けられなくなる見通しだ。同社は新たな解決策を模索する意向を表明した。
フォードは昨年6月、独自開発する同社初の電気自動車(BEV)専用車台を用いたモデルをスペインのバルセロナ工場で生産すると発表した。同モデルをどの拠点で生産するかを巡りバルセロナ工場と争ってきたザールルイ工場はこれに伴い、中期的に生産車種がなくなった。
ザールルイ工場が閉鎖されると、大量の失業者が出るうえ、地元ザールラント州の主要産業である自動車が斜陽化する懸念があることから、州政府は是が非でも同工場の雇用を維持したい考えで、フォードとともに解決策を模索。売却先候補1社を見つけ、今年6月には拘束力のない合意に至った。2,500人を継続雇用するというものだった。
だが、同候補からこのほど、交渉打ち切りを伝えられたことから、すべてが白紙に戻った。この投資家は中国の電動車メーカー比亜迪汽車(BYD)と目されている。
ザールルイ工場の従業員数は4,400人。フォードはこのうち1,000人を継続雇用する意向を示しているものの、新たな解決策がなければ残り3,000人以上は整理解雇が避けられなくなる。サプライヤーでも1,300人の雇用が危ぶまれる。