チェコのエネ大手EPHがティッセンの鉄鋼部門への出資に意欲

独複合企業ティッセンクルップが分離予定の鉄鋼子会社ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパ(TKSE)に資本参加することに、チェコのエネルギー大手EPHが強い関心を示している。EPHの広報担当者は日曜版『フランクフルター・アルゲマイネ(FAS)』に、「当社はティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパへの出資に適した候補の1社だと確信している」と明言した。EPHがTKSEへの出資を目指しているとの観測は以前からあったが、正式に明らかにしたのは今回が初めて。鉄鋼の脱炭素化を資金面で支援できるうえ、シナジー効果も大きいと強調している。

鉄鋼事業は以前からティッセンの重荷となっており、経営陣は分離を模索。18年には印タタ製鉄の欧州事業と統合することで合意したが、欧州連合(EU)欧州委員会の承認を得られなかったために頓挫した。それでもTKSEの分離を諦めてはいない。6月にティッセンの社長に就任したミゲル・ロペス氏は分離に意欲を示している。

EPHの広報担当者は、鉄鋼生産の脱炭素化が進めば電力、水素、天然ガス、排出量の価格が上昇すると指摘したうえで、「欧州発電10大企業の1社であるEPH」はこれらの分野で豊富なノウハウをTKSEに持ち寄ることができると述べ、EPHの出資はメリットが大きいとの認識を示した。

ティッセンのロペス社長はFAS紙に、EPHのダニエル・クレチン会長は信頼できる人物だと述べたうえで、TKSEへの出資者選定に向けては関心を持つ様々な投資家と協議する意向を表明。TKSEに資本参加する投資家は現時点で決まっていないことを明らかにした。

TKSEは水素製鉄プロジェクトに絡んで国と地元ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州から総額20億ユーロの巨額補助金を受給することが決まっている。このためTKSEへの出資者選定ではドイツ政府と同州政府の意向も踏まえる必要がある。

TKSEの従業員はEPHの出資に反対している。NRW州のモナ・ノイバウアー経済相はFAS紙に、出資者選定では従業員の声も反映されるべきだと述べており、EPHがTKSEに資本参加できるかどうかは定かでない。

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