西南ドイツを拠点とするエネルギー大手EnBWは10日、送電網子会社トランスネットBWに国が資本参加すると発表した。再生可能エネルギーをベースとするエネルギー経済の実現に必要な投資資金を確保する方針に基づき、トランスネットBW株24.95%を政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)に譲渡する。取引価格は非公開。カルテル当局の承認を経て取引が月内に完了すると見込んでいる。
EnBWは昨年8月、トランスネットBW株49.9%をそれぞれ24.95%に分割して売却する計画を打ち出した。すでに貯蓄銀行を中心とするコンソーシアムが5月に24.95%を取得している。KfWには昨年8月時点で残り24.95%の先買い権が認められており、今回これが行使された。
EnBWは2021~25年に総額120億ユーロの投資を計画している。そのうち60億ユーロ強を電力・ガス輸送網の拡充に充てる方針。同社は自らの投資負担を軽減するため、配電網の拡充や洋上風力発電事業で協業を活用している。
欧州連合(EU)では競争原理を通して電力価格を引き下げるため、発送電分離が推進され、ドイツの電力会社も多くが分割された。だがその結果、独裁国家中国の企業が送電網会社への出資を企てるなど、安全保障上のリスクが露呈。現在のエネルギー危機でもロシア産天然ガスに輸送インフラも含めて強く依存してきたことの問題が鮮明になっている。
独政府はこれを踏まえ、送電網の国有化に動いている。国内で送電事業を展開する4社のうち50ヘルツにはすでに20%を出資。テネットTSOについても買収の方向で親会社の蘭テネット(国有企業)および蘭政府と交渉している。