ドイツのショルツ首相(社会民主党=SPD)とハーベック経済・気候相(緑の党)、リントナー財務相(自由民主党=FDP)は13日の閣議後の記者会見で、2024年予算などの規模を縮小する方針を表明した。起債枠の転用などを違憲とした連邦憲法裁判所の判決を踏まえたもので、ショルツ氏は「何ができ、何ができないか」を見極めたと述べた。
憲法裁は11月中旬、コロナ禍対策の起債枠を「エネルギー・気候基金(現気候・トランスフォーメーション基金=KTF)」に転用した政府・与党の措置を違憲とする判決を下した。裁判官がその際に示した基準を当てはめると、国の他の基金も基本法(憲法)違反の可能性が極めて高いことから、政府は複数年の予算計画の抜本見直しを余儀なくされている。
KTFでは27年までに2,118億ユーロを計上する計画だった。憲法裁判決でそのうち600億ユーロが違憲とされたことから、政府は収入を増やすとともの支出計画を見直す意向だ。
収入増に向けては炭素税の引き上げ幅を従来計画よりも拡大する。これまでの計画では来年1月1日付で排出1トン当たり現在の30ユーロから40ユーロに引き上げることになっていたが、これを45ユーロに変更する。自動車燃料や暖房用の灯油・天然ガスの料金は上げ幅が拡大することになる。
KTFの支出削減に向けては、電気自動車(BEV)購入補助金の廃止時期を25年から前倒しする。廃止の時期は明らかにしていない。ソーラー産業向けの補助金も削減する。
KTFの資金は老朽化した鉄道インフラの刷新にも投入されることになっていた。27年までの支出額は125億ユーロ。政府は今回、同支出を削減せず、他の財源を通して確保することで合意した。リントナー氏は一例として、民営化収入を挙げた。国有会社ドイツ鉄道(DB)は国際物流子会社シェンカーの売却を模索しており、その収入を充てるもようだ。
憲法裁判決を受け、24年予算には170億ユーロの不足が発生した。その穴を埋めるため、政府はプラスチック税を導入するほか、環境に有害な補助金を計30億ユーロ削減する意向だ。dpa通信によると、国内線の燃料税免除措置と農業・林業で用いる軽油の税優遇を廃止する。労働政策の分野でも15億ユーロのコスト削減を図る。すべての省が歳出削減に寄与することになる。
30億ユーロ規模の電力税負担軽減と、経済活性化に向けた企業負担の軽減策は予定通り実施する意向だ。独東部地区に半導体工場などを誘致するため補助金を給付する政策も堅持する。
単年度財政赤字の対名目国内総生産(GDP)比率を景気の影響を除いた構造ベースで0.35%以内にとどめることを義務付けた基本法(憲法)の「債務ブレーキ」ルールについては、適用除外を可能な限り回避することで合意した。与党内では適用除外を強く求めるSPD・緑の党と、これに反対するFDPが対立していたが、それぞれが歩み寄った格好だ。