ドイツ連邦陸運局(KBA)が5日に発表した1月の乗用車新車登録台数は21万3,553台となり、前年同月を19.1%上回った。比較対象の2023年1月は電動車補助金の縮小で需要が落ち込んでおり、今年1月はそのベース効果で数値が大きく増えた。コロナ禍前の19年同月に比べると19.6%少ない。乗用車市場には高インフレや金利上昇、電気自動車(BEV)購入補助金の突然の打ち切りなど強い逆風が吹いており、メーカーは割引の強化を通して販売の底上げに務めている。
新車登録を動力源別でみると、BEVは前年同月比23.9%増の2万2,474台に拡大。プラグインハイブリッド車(PHV)は62.6%増の1万4,394台と大きく伸びた。PHVは22年12月末の補助金終了を受け23年1月の新車登録が激減しており、その反動で大幅増となった。
PHVを含むハイブリッド車(HV)も31.0%増の6万6,496台に拡大した。内燃機関車はガソリン車が16.9%増の8万1,724台、ディーゼル車が4.3%増の4万936台だった。
シェアをみると、BEVは前年同月の10.1%から10.5%、PHVは4.9%から6.7%へと拡大。HVは2.8ポイント増の31.1%に上昇した。ガソリン車は0.7ポイント減の38.3%、ディーゼル車は2.7ポイント減の19.2%だった。乗用車新車登録に占めるBEVとPHVの合計は17.2%(前年同月15.0%)、BEVとHVの合計は41.6%(38.4%)となっている。
環境対応車のシェア拡大などを受け、走行1キロメートル当たりの新車の二酸化炭素(CO2)排出量は前年同月比4.1%減の125.6グラムに低下した。
シェアが最も大きかった部門はSUVで、28.0%(前年同月27.0%)に上った。これにコンパクトカーが20.2%(15.8%)、オフロード車が13.4%(14.1%)で続いた。4位は小型車で11.5%(11.9%)、5位は中型車で9.2%(10.2%)となっている。
伸び率が最も大きかった部門はミニバンで、161.3%に達した。前年同月は大幅に落ち込んでおり、その反動が大きい。コンパクトカーも52.7%増と好調だった。
各ブランド(シェア0.1%未満を除く)の実績をみると、伸び率が最も大きかったのは三菱で251.5%増の2,348台を記録。これにレクサス(180.7%増の379台)、DS(178.5%増の220台)、BYD(178.0%増の139台)が続いた。
ドイツ車ではオペル(72.4%増の1万2,631台)、スマート(62.5%増の1,180台)、BMW(44.2%増の1万6,087台)、ミニ(35.4%増の2,158台)、ポルシェ(24.2%増の3,798台)、VW(12.1%増の4万1,548台)が2ケタ台の伸びを記録。アウディ(4.6%増の1万5,439台)も前年同月を上回った。メルセデス(0.5%減の2万1,323台)とフォード(9.7%減の7,378台)は減少した。
三菱とレクサス以外の日本車ではスバル(66.9%増の394台)、日産(25.7%増の2,512台)、トヨタ(2.5%増の6,703台)が前年同月を上回った。ホンダ(3.8%減の484台)、マツダ(13.5%減の2,879台)、スズキ(36.3%減の1,153台)は振るわなかった。
日本車以外の主な輸入ブランド(シェア1%以上)をみると、シトロエン(95.6%増の4,439台)、ボルボ(81.3%増の4,049台)、セアト(80.2%増の1万70台)、プジョー(78.4%増4,886台)、起亜(53.8%増の4,838台)、シュコダ(21.3%増の1万6,686台)、ダチア(16.9%増の6,631台)、フィアット(13.4%増の4,500台)、現代(7.0%増の6,501台)は増加。ルノー(17.4%減の2,945台)とテスラ(25.7%減の3,152台)は減少した。
BYD(比亜迪汽車)以外の中国車はMGロエベが85.5%増の896台、GWM(長城汽車)が4,400.0%増の90台、NIO(蔚来汽車)が2,600.0%増の27台、リンク・アンド・コーが98.8%減の5台だった。
■値下げ額は最大1.9万ユーロ
CAR自動車調査センターの最新レポートによると、独乗用車市場では値引き競争が激化しており、新車登録上位30モデルの1月の値引き率は電動車で平均13.6%、内燃機関車で同17.1%に達した。「電動車市場は荒れ狂う魔女の鍋に等しい。値下げしない企業は市場シェアを失う恐れが高い」と指摘。値下げ競争は今後一段と強まるとの見方を示した。
全ドイツ自動車クラブ(ADAC)も3日、BEV補助金の打ち切りを受けて値下げ競争が激化していることを明らかにした。値下げ額が最も大きいモデルはBYDの「漢(Han)」で1万9,040ユーロに上る。値下げ率ではダチア「スプリング・エレクトリック」の40.7〜44.0%が最大で、同モデルはわずか1万2,750ユーロで販売されているという。VWの「ID.3」「ID.4」「ID.5」「ID.7」でも4,760〜7,735ユーロの値引きが行われている。日産「リーフ」は割引額が9,103ユーロ(25.4%)に上る。
一方、独自動車工業会(VDA)が同日発表した1月の国内乗用車生産台数は31万2,100台となり、前年同月を4%下回った。輸出台数は22万7,800台で、2%増えている。独メーカーの国内受注台数が横ばいにとどまったのに対し、国外は同20%増加した。