2025年の生産停止が予定されている米自動車大手フォードの独ザールルイ工場で7
日、従業員の処遇に関する労使の大枠合意が成立した。22日に行なわれる労組の組合
員投票で承認されれば、29日付で発効する。
フォードは22年6月、独自開発する同社初の電気自動車(BEV)専用車台を用いたモデ
ルをスペインのバルセロナ工場で生産することを決めた。同モデルをどの拠点で生産
するかを巡りバルセロナ工場と争ってきたザールルイ工場はこれに伴い、中期的に生
産車種がなくなった。
ザールルイ工場が閉鎖されると、大量の失業者が出るうえ、地元ザールラント州の主
要産業である自動車が斜陽化する懸念があることから、州政府は是が非でも同工場の
雇用を維持したい考えで、フォードとともに解決策を模索。売却先候補1社を見つ
け、23年6月には拘束力のない合意に至ったが、交渉は同年秋に決裂した。労使はこ
れを受け、従業員の処遇に関する交渉を進めてきた。
今回の合意では従業員3,750人のうち1,000人を継続雇用することが取り決められた。
そのほかの従業員は自主退職プログラムや高齢労働者パートタイム制度を通して削減
していく。継続雇用されない従業員は好条件で受け皿会社に移籍し、リスキリング研
修を受けることができる。
ザールルイ工場では現在、内燃機関車のコンパクトカー「フォーカス」を生産してい
る。同モデルの生産終了はこれまで25年5月を予定していたが、今回の合意で同11月
に延期することが取り決められた。
同工場の周辺にはサプライヤーの工場があり、雇用規模は計1,200人に上る。金属労
組IGメタルは今後、これら被用者の処遇を巡り交渉を行う意向だ。