コロナ禍に伴う深刻な材料・部品不足の発生から3年以上が経過したにもかかわら
ず、独メーカーの多くがサプライチェーンの強靭化を現在も積極的に推し進めている
ことが、Ifo経済研究所のアンケート調査で分かった。
2023年11月に実施された同調査によると、「サプライチェーンの障害リスクを低減す
るための措置を過去1年以内に取った」メーカーは75%に上った。22年7月の調査でも
コロナ禍発生後に同様の措置を取った企業が87%に上っており、大半のメーカーが継
続的に対策を進めていることがうかがわれる。
今回のアンケートで最も回答が多かった対策は、「調達先の多様化/新たなサプライ
ヤーの開拓」で58%に上った。これに「在庫の拡大」が45%、「サプライチェーンの
監視強化」が44%、「既存のサプライチェーンの再編」が34%、「垂直統合/内製の
強化」が17%で続いた。
調達先の多様化はデータ処理装置/電子・光学製品業界で79.6%、機械で70.6%と特
に多かった。データ処理装置/電子・光学製品業界は在庫の拡大(79.4%)、サプラ
イチェーンの監視強化(65.9%)でも数値が高い。自動車もサプライチェーンの監視
強化で62.3%、既存のサプライチェーンの再編で51.5%、垂直統合/内製の強化で
33.1%と数値の高い分野が多く、複数の対策を組み合わせている企業が多いことが分
かる。
対策を企業の規模別でみると、大企業では調達先の多様化(64%)、サプライチェー
ンの監視強化(51%)で数値が高かった。中小企業では在庫の拡大が最も多く49%に
上った。Ifoはこの違いについて、調達先の多様化とサプライチェーンの監視強化は
固定費の膨張につながるため、中小企業には実行しにくいという事情があると説明し
ている。
コロナ禍時には世界の工場である中国や東南アジアで生産が一時、大幅に落ち込んだ
り、港湾機能が弱まったことから、世界的にサプライチェーンがひっ迫。ドイツの
メーカーも生産調整を余儀なくされた。材料・部品不足は22年下半期から緩和が進
み、現在はおおむね解消されているものの、独メーカーはこの経験や地政学リスクを
踏まえ、対策をこつこつと積み重ねている。