米IT大手マイクロソフトのブラッド・スミス社長は15日ベルリンの自社拠点で、今
後2年でドイツに32億ユーロを投資すると発表した。同社の対独投資額としては過
去最大。人工知能(AI)の利用拡大を見据え、データセンターの容量を倍増させる
とともに、顧客企業の従業員などに対しAI利用の大規模な研修サービスを提供し、
AIトランスフォーメーションを支援していく。発表イベントに参加したオーラフ・
ショルツ首相は、産業立地としてのドイツの魅力と投資家の信頼を示すものだと強
調した。
独南部のフランクフルトと、西部のノルトライン・ヴェストファーレン州「ライン
褐炭地区」にデータセンターを設置する。同地区は褐炭の採掘と褐炭火力発電が長
年、行われてきた地域。炭素中立政策の一環で露天掘りと褐炭発電が2030年までに
終了することが決まっている。マイクロソフトの投資は同地の再開発に寄与する見
通しだ。フランクフルトとその周辺地域にはデータセンターが集積している。
同社はクラウドサービス「アジュール」を提供している。サービスにはAIも含まれ
る。ドイツではシーメンス、バイエル、コメルツ銀行などの大手企業からスタート
アップに至る幅広い企業が利用している。スミス氏は「製造、自動車、金融サービ
ス、製薬、ライフサイエンス、医療機器といった重要な経済分野でAIアプリケー
ションの需要が増えている。これらの業界は経済的な転換を通して根底的に変化し
ていることから、ドイツの企業に世界を主導する技術を提供することは重要だ」と
述べた。
AIの研修については25年末までに120万人以上に提供する。企業のAIトランス
フォーメーションと安全で責任あるAI開発に必要な知識や技術の学習プログラム
を、認定した研修事業者や産業パートナー、大学などを通して提供。生成AIの職業
資格認定も行う。アジュールを土台とするエコシステムの拡充効果が見込まれる。