第一三共が独に巨額投資、R&D施設開幕式に保健相が出席

第一三共は16日、ドイツ南部のパッフェンホーフェン工場で研究・開発(R&D)施設
の開所式を行うとともに、同拠点に約10億ユーロを投資することを明らかにした。同
国では最近、外資系製薬会社の巨額投資計画発表が相次いでいる。式典に駆け付けた
カール・ラウターバッハ保健相は、「(第一三共が)新たな治療法をわが国で研究・
開発することは、医薬品の研究・生産促進戦略を加速するという政府のモチベーショ
ンを高める」と述べ、歓迎の意を表明した。
パッフェンホーフェン工場は第一三共の前身の1社である三共が1990年の独ルイトポ
ルトヴェルケ買収で取得した拠点。これまでは循環器系疾患治療薬の開発と生産を行
い、世界50カ国以上に輸出してきた。今後はがん治療薬事業も行う計画で、乳がん、
肺がん、胃がんの抗体薬物複合体(ADC)を開発・生産する。2030年までに同拠点の
拡張を終え、トップクラスの研究者やプロセスエンジニア、バイオ技術の専門家など
を最低でも350人、新規採用。従業員数を現在の700人強から大幅に拡大する。
ADC用の建造物は26年末までに完成する予定。完成すると独・墺・スイス圏(DACH)
でトップクラスのバイオ企業になると見込んでいる。
ドイツ政府は昨年12月、「国家医薬品戦略」を閣議了承した。医薬品の分野で産業立
地競争力を高める狙いで、治験許可手続きの簡素・短縮化や、電子カルテの情報やが
んデータバンクのデータを医薬品や治療法の開発、研究のために利用しやすくするこ
とを目指している。スイスの製薬大手ロシュはこれを受け今月上旬、今後3年間の対
独投資額を計10億ユーロ上乗せする方針を発表した。米イーライリリーは同社初のド
イツ工場を建設する。

上部へスクロール